ねとげ~たいむ・エキスパート!!
魔法障壁はガラスの様に砕け散ると私の上に倒れて来た。
「きゃあああっ!」
私はモンスターの下敷きになった。
「コロナっ!」
「コロナを離せぇーっ!」
エミルの声が聞こえる。
エミルはジャンプすると飛び蹴りをお見舞いした。
「エミル・キーックッ!」
『ギャアアッ!』
ジャイアント・スパイダーは吹き飛ばされて地面に転がった。
自由になった私が上半身を起こすと皆がやって来て心配そうに見降ろした。
「コロナ、大丈夫?」
「大丈夫、まだやれる!」
これがゲームで良かったと胸を撫で下ろす。
現実に巨大な蜘蛛に押し潰されて死んだなんて凄く嫌な死に方だ。
そりゃゾンビに喰われたり見たら呪われる呪いのビデオで死ぬ方がゴメンだけど……
さっきのダメージは攻撃終了時のおまけみたいな物だからさほどの物じゃ無い。
でも念の為にレミが全員に魔法をかけてくれてHPが回復した。
「やっぱりこいつ強くなってる」
「それだけじゃない、多分ステータスも上がってる」
「ステータスもっ?」
エミルは顔を顰めた。
本来どのモンスターも攻撃力や防御力が定められている。
だけどこいつは脱皮する度に攻撃力や防御力が上昇する…… このまま続けば討伐は不可能になってしまう。
「センリ、アンタの魔法で動き封じ込められない? そうしたら皆でタマ取んだけどね」
「タマ?」
「ああ、な、何でもないわ…… ほら、アンタ達は攻撃に集中して!」
レミは顔をヒクつかせながら目を反らした。
本当にレミってどんなお家に暮らしてるんだろう、以前聞いた事があったけど『聞かない方が良い』と誤魔化された。
とにかく私とエミルは技コマンドを開いて攻撃力増強の技を選択しようとする…… でもするとその時だ。
「待って」
センリが私達を止めた。
「どうしたの?」
「このままじゃ幾らやっても同じ…… 古人曰く『重き馬荷に上荷打つ』」
センリは言う。
ちなみにこの言葉の意味は大きな負担を背負っているのにさらに負担を重ねる事の意味だ。
「そんな事言ったって、戦わなきゃ勝てないよ〜っ!」
「エミル、話しは聞こうよ」
私はエミルを宥める。
するとセンリが言って来た。
「皆、スキルを見せて」
「え? うん」
私達はステータスのスキル・コマンドを開いた。
私のジョブは戦士の為に攻撃と防御系スキルを重点的に置いていて、エミルはスルー・スキルを除けばほぼ攻撃系のスキルが多い……
後方支援のレミもセンリは魔法ダメージ増加のスキルや使用魔力激減のスキルなどほぼ同じだけど、やっぱり神官と魔術師だけあって回復魔法や防御魔法、攻撃魔法と障害魔法などに分かれていた。
それを見たセンリの眼鏡越しの瞳が細くなるとレンズが光を放った。
刹那の間が空くと自分からは滅多に喋らないセンリが口を開いた。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki