ねとげ~たいむ・エキスパート!!
私達は街に帰って来た。
アイテム・コマンドには錬金素材『変原石』が新たに追加された。
「お宝沢山ゲットっスね〜、これも皆のおかげっス」
「私は何も…… 活躍したの皆だし」
私は正直喜べなかった。
何しろ私は盾になったくらいで、活躍したのはセンリ・アルネちゃん・ショコラさん達だった。
するとホイップ君が言って来た。
「それを言うなら僕だって、ヒーラーなのに対して役に立てませんでしたから……」
「そうだな、まぁ…… 最後には活躍してたがな」
ショコラさんが目を反らしながら会話の中に入って来た。
でもその言葉はホイップ君を褒めていた。
するとホイップ君は鼻で笑いながらお姉さんに背を向けながら言い返した。
「センリさんやアルネさんがいたとは言え、誰かさんも凄かったよ」
その言葉を聞くとショコラさんも頬を緩めた。
どうやらもう大丈夫みたいだ。
「古人曰く『雨降って地固まる』」
「でも良かった。これもアルネちゃんのおかげだよ」
私はアルネちゃんを見た。
正直アルネちゃんがいなければ2人の間の溝は直らなかったかもしれない。
しかも2人の問題だった武器防具の錬金素材までゲットして解決してしまった。天然と言うか凄いと言うか……
そんな事を考えているとアルネちゃんは微笑すると私達に背を向けた。
「ちょ、アルネちゃん? どこ行くの?」
「何って、もう1回あのクエスト受けて来るんスよ」
「えっ? 錬金素材沢山集まったのに?」
「ん〜〜、ローネちゃんから言われて…… できるだけたくさん集めて欲しいって言われてるんスよ、良く分からないっスけど」
アルネちゃんは頭に人差し指を当てて顔を曇らせながら首を傾げた。
普通に考えると錬金素材は多ければ多いほど良い、多分お姉ちゃん達との分も集めてるんだろう、武器にも様々な種類があるし、防具も鎧・兜・盾がある。
でもこのクエストを考えたのはローネさんだから、多分何かあるはずだった。
しかし当のアルネちゃんは鼻歌交じりに言って来た。
「さ〜てと、腕がなるっス〜」
アルネちゃんは大きく両手を上げながら歩き出した。
「アルネさん、不思議な人ですね」
「一体お前とどんな関係なのだ?」
「あはは…… 私も正直分からないんだけどね」
私は苦笑した。
何しろ幼馴染で長い付き合いでも私もアルネちゃんの事を理解できない所がある。
アルネちゃんだって人間(中の人)なんだから泣く事もあれば落ち込む事もある。
宿題を忘れて教師に怒られても、テストで0点を取っても、ご両親にこっぴどく叱られて泣いたり落ち込んだりする事は日常茶飯事だ。
でも直ぐに平然と笑ってしまう、まるで怒られた事等無かったみたいにだ。
ただし思いつきで行動する人だから正直心配なのは事実だった。アルネちゃんは人を疑わないし悪い所は見ようとしない、詐欺とかにあったら大変だ。
そんな事を考えているとセンリが言って来た。
「そんな事は無い」
「え?」
センリの言葉に私やショコラさん達はセンリを見た。
するとセンリは目を細めながら深く息を吐きながら言って来た。
「古人曰く『笑う門には福来る』、何事も明るくしていれば幸せが訪れる」
「本人は結構痛い目見てるけど???」
「それでも笑ってられるのは凄い事、どんな時でも笑える人はそうはいない」
センリはそう言うとショコラさんとホイップ君が言って来た。
「言われてみればそうだな、なんやかんやで彼奴といれば、嫌な事等忘れるな」
「今回は少し時間かかったけどね」
ショコラさんは手を頭に回し、ホイップ君も頬を掻きながら苦笑した。
センリの言うとおり、アルネちゃんの強さはどんなピンチの時でも笑っていられる事だった。
例えるならアルネちゃんは兔だった。側にいるだけで誰もが楽しくなれる笑顔の兔…… それがアルネちゃんだ。
アルネちゃんに教えられた。逆境だからこそ楽しむ、辛い時だからこそ笑ってやり過ごす…… それがアルネちゃんの強さだった。
私は一間置くとショコラさん達に尋ねた。
「それでどうする? 2人はまだ時間ある?」
「ええ、勿論」
「言われるまでも無い」
2人は笑顔で強く頷きながら得物を構えた。
「古人曰く『世の中、楽しんだ者勝ち』!」
センリを見るとセンリも同じ答えだった。口の両端を上げながら神鳥の杖を私の方に向けた。
私達はすっかり小さくなったアルネちゃんの元へ走って行った。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki