ねとげ~たいむ・エキスパート!!
あれはまだ小学生に上がってすぐの事だった。
買って貰ったゲームをお姉ちゃんと遊びに来たアルネちゃん(萌ちゃん)と3人で遊んでいた。
ところが些細な事でお姉ちゃんと喧嘩してしまった。私達はケンカする事自体が珍しかったのだけど、そこを萌ちゃんが割って入った。
『いいかげんにするっス〜っ!』
その時の萌ちゃんは確かに怒っていた。
ただその時は泣いていた。
その涙に罪悪感を感じて、それ以来私達はあまり言い争いをする事はなくなった。
ただ今回は子供じゃ無いので泣いていなかった。
「今のはどっちも悪いっス! ショコラちゃんもお姉さんなら弟君を粗末にしちゃダメ! ホイップ君もお姉さんを大事にしなきゃダメっス!」
「「……は、はい」」
2人は頭を下げた。
厨二病のショコラさんも素に戻っていた。
大人しい人ほど怒ると恐い、ホイップ君も恐いけど、この中でピラミッドを作れば頂点に君臨するのは間違いなくアルネちゃん、その直ぐ下がホイップ君とセンリ(多分)、さらにその下がショコラさんで、1番下が私になるのは間違いなかった。
これが格差問題と言う奴か…… 笑ってはいたけど、本当はアルネちゃんも怒ってたに違いない。
私がそう思っているとアルネちゃんは言った。
「2人供、表に出て仲直りしてくるっス」
「え? いや、でも……」
「そ、それは……」
「いいから! ダッシュでして来るっス!!!」
「「は、はいぃぃーーっ!!!」」
2人が慌てふためくとアバターの動きが止まった。
ゲームを点けっぱなしでショコラさんとホイップ君の本人同士が謝りに行ったんだろう。
数秒後、2人のアバターが動いた。そしてアルネちゃんに敬礼しながら言った。
「「謝ってきました!」」
「うん、良い子達っス!」
今まで強張っていたアルネちゃんの表情が緩くなった。
センリも本当に信じられなさそうに見ていた。
「古人曰く、『人は見かけによらない』」
「あははは……」
私は苦笑した。
2人の仲は回復した。
でもこの状況はどこも変わっていなかった。
クリア・スライムの攻略法が見付からない…… それどころか私達の能力をコピーしてどんどん強力になって来る。
これ以上下手に動いて奴を強力にする訳にはいかなかった。
ステータスを開くとタイムリミットが刻一刻と迫ってきている、時間は待ってくれなかった。
「コロナさん、回復しましょう」
「いや、このまま回復したらあいつまで回復しちゃうよ」
「でもこのままじゃコロナちゃんゲームオーバーっスよ」
「道具とかはダメなのか?」
「試してみる?」
一か八か試してみる事にした。
ショコラさんが道具コマンドを開いて体力中回復の『回復薬(中)』を使ってくれた。
コマンドの中にはHP最大回復の回復薬も入っているが、もしそれを使って完全回復されたら厄介以外の何物でもない。
私のHPゲージは半分まで回復した。
「どうかな?」
私はクリア・スライムを見て見る。
刹那の間待つけど、クリア・スライムには何の変化も訪れなかった。
どうやらアイテムまではどうにもならないようだった。考えてみれば当然の事だった。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki