ねとげ~たいむ・エキスパート!!
アルネちゃんが私の隣に座り、全ての事情を話した。
アルネちゃんは腕を組んで少し考えると、右手でフィンガースナップをすると言って来た。
「だったら簡単っス、武器も防具も同時にゲットすれば良いだけっス」
「「「はぁ?」」」
私達は空いた口が塞がらなかった。
センリも驚いて目を眼鏡越しに目を見開いた。
するとアルネちゃんが言って来た。
「丁度ローネちゃんが用意してくれたクエストがあるっス、一緒にやれば問題解決っス!」
「そうなの?」
「アタシも苦手なクエストだったんスけど、仲間を探してた所っス」
アルネちゃんがこれから受けようとしたクエスト、それは……
私達は湿地帯へやって来た。
今回受けたのは『水妖の洞窟』だった。
パラディスの国境付近にある農村で水妖…… つまりはスライムが大量発生し、村の農作物を食いあさっていると言う。
調査によるとスライム達は農村から少し離れた湿地帯にある洞窟の中に巣を作っていると言う。
私達は足首まで浸かるほどぬかるんだ沼を歩いていた。
途中モンスターの群れと戦闘になった。
相手は体が泥で出来た顔に目も鼻も口も無い頭に雑草が髪の毛のように生えた人型モンスター『マッド・マン』だった。
「はああっ!」
私はレイジング・ソードを振るってマッド・マンを攻撃した。
炎の斬撃はマッド・マンの体を切り裂くとたちまち紅蓮の炎に包まれて体がガチガチに固まるとその場に崩れ落ちた。
他の子達もマッド・マンと戦っていた。
まるでゾンビの様に襲い掛かって来るマッド・マン達を撃退して行った。
全てのマッド・マン達を倒した後、私達は得物を納めて先を急いだ。
「意外ときつかったね、HPも削られた」
私は言う。
するとセンリ達が言って来た。
「古人曰く『塵も積もれば山となる』、いくら小さな攻撃でも数が多ければ大ダメージになりかねない」
「大丈夫ですよ、危なくなったらボクが回復してあげますから」
「ハッ、こいつはそれしか脳が無いからな、薬草程度の価値しかない」
「ショコラさん、そんな言い方……」
「そうだね、でも魔法ならセンリさんとアルネさんがいるからどこかの誰かさんはいなくても問題はないけどね」
「何だと朴念仁ッ!」
「何だよ中二病っ!」
「ちょ、2人供止めて!」
私は2人を宥めた。
ショコラさんがエミルと顔を合わせる度にケンカするのはしょっちゅうだけど、ホイップ君とケンカをするのは珍しい。
いや、それは偏見だ。リアルじゃしょっちゅうケンカしてるかもしれない。
多分ホイップ君が大人し過ぎたんだろう、でも誰にだって我慢の限界くらいはある。
すると前を歩いていたセンリが言って来た。
「コロナ、古人曰く『夫婦喧嘩は犬も食わない』…… 下手に口出しすると余計ややこしくなる事もある、ほおって置けば良い」
「でも……」
「あははっ、何だか懐かしいっスね」
「え?」
アルネちゃんが笑ういながら言って来ると私は首を傾げた。
「ホラ、昔あったじゃないっスか、コロナちゃんとルナがケンカした事」
「えっ? 私達が??」
私は記憶を掘り起こして見る。
アルネちゃんはそう言ってるけど、私とお姉ちゃんはケンカした記憶が無かった。
そりゃお姉ちゃんだって人間なんだし怒らなかった事は無い、でも私に対しては怒った事は無い。
私だってお姉ちゃんに意見した事はしょっちゅうあるけど、怒った記憶が無かった。
恐らくアルネちゃんの記憶違いだろう、何しろ彼女はウソを言った事が無い…… と言うよりウソが付けない人間だ。
そんな事を思っていると問題の洞窟へやって来た。
ポッカリ空いた洞窟の中から毒液まみれの水が溢れていた。原因は間違いなくここだった。
私達は洞穴を潜って中に入って行った。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki