ねとげ~たいむ・エキスパート!!
クエスト6,楽しむ兔
テリオさんとのクエストから数日後だった。
ウチの学校では体育祭が行われ、青空の下では白熱した戦いが繰り広げられていた。
100メートル走、玉入れ、綱引きなどが行われ、青春真っ盛りの若人達で賑わっていた。
私は体育はそんなに得意じゃないから活躍はできない…… と言うより足手まといみたいな感じだった。
でも2年生は凄かった。
2年生にいる最強の体育会系が注目を集めていた。
それはお姉ちゃん達だった。
「位置に付いて、よ〜い!」
スタートラインに立っていた先生がピストルを鳴らした。
大きな音と供に白線の後ろで構えていた生徒達が一気にダッシュした。
体操着姿の女子生徒達の中、1人の女子生徒がグラウンドを疾風のごとく駆け抜けて行った。
尾上さんだった。
尾上さんは他の生徒との差を広げながらラインを切ってゴールを決めた。
「「「「「きゃああ〜〜っ!!」」」」」」
グラウンド内に黄色い声援が木霊した。
ウチのクラスにいる尾上さんファンの子もすごく喜んだ。
私も正直凄いと思っている、ああ言う人の妹になりたいと思った。
すると次はもう1人の…… と言うより最強のランナーがスタートした。
ピストルと供に駆けだしたのは本当のお姉ちゃんだった。
お姉ちゃんも他の生徒達との差を付けてゴール、尾上さんと同じくらいの歓声が上がった。
お姉ちゃんも人気はあると言ってたけど、本当にここまであるとは思わなかった。
午前のプログラムは全て終了し、次は昼食の時間となった。
各自校庭や中庭などの好きな場所でこの場所に用意して来たお弁当を広げた。
私のはお姉ちゃんのと兼用なので、朝5時から起きて台所に仕舞って置いた重箱を引っ張り出すと昨日から仕込んでおいた食材を調理した。
ちょっと本気を入れた。重箱の蓋を開くと中には唐揚げとトンカツとポテトサラダなど、簡単な物だけど栄養のバランスとスタミナ補給の良い物を入れておいた。
「うわぁ、美味しそ〜っス?」
「ホント、凄いわね」
萌ちゃんと唯月先輩が言って来た。
私はお姉ちゃん達の仲間に入れて貰った。
萌ちゃん達が普段どんな昼食を摂ってるのか知らないけど、運動会と言う事で結構豪勢だった。でもさすがに重箱で持って来る人はいなかった。
するとお姉ちゃんが抱きつきながら言って来た。
「凄いでしょう? さすが私の妹だわ」
(自分は何もしてないクセに……)
私は目を細めながらそう思った。
すると望先輩が言って来た。
「しかし、料理できて小説書けて…… マジで妹ちゃん凄いな」
「そうでしょう?」
「何で蒼が言うの?」
朋香先輩が言う。
「何言ってるの、茜は私の妹なのよ、つまり茜が私で私が茜なのよ!」
「何だよ、その漫画みたいな設定」
「そうっス、そうっス! 茜ちゃんは茜ちゃんで蒼は蒼っスよ!」
「なによそれ、私から茜をひっぺがそうっての? 冗談じゃないわよ、茜は私が認めた相手以外には渡さないからね!」
じゃあ私は一生独身だ。
お姉ちゃんは相手が誰だろうと絶対に認めようとしないだろうな……
埒が明かないので私は話題を変える事にした。
「それよりもさ、次の応援合戦、萌ちゃんがリーダーやるって本当?」
私は萌ちゃんを見た。
お姉ちゃんから聞いたんだけど、お姉ちゃん達は応援団をやると言う。
そして萌ちゃんがリーダーをやるらしい、すると萌ちゃんが不敵に笑うと頬にご飯粒を付けながら言って来た。
「ふっふっふ、その通り、期待してて欲しいッス、これで赤組の勝利は間違いないっス!」
「あ〜、こりゃ負けたな」
「ホント……」
「むっきぃ〜〜っ! 何て事言うっスか〜っ! それでも友達っスか〜〜っ!」
「まぁまぁ、萌ちゃん、落ちついて……」
頭に血が昇った萌ちゃんの両肩を立ちあがった亀井先輩が宥めた。
それから昼休み終了後、話題の応援合戦が行われた。
何とお姉ちゃん達がチアガールに変身した。
しかも胸を強調するデザインに赤い袖口の白い生地に胸に勝利『赤』と書かれたノースリーブの上半身だけどおへそ丸出し…… スパッツこそ穿いてるものの、赤い生地に紫の縁の丈の短いスカートを穿いていた。
「ふれっ、ふれっ、赤組! がんばれ、がんばれ赤組〜っ! L・О・V・E赤組〜っ!」
お姉ちゃん達は一斉に両手にもったポンポンを振るい、脚を上げたりして応援をしていた。
お姉ちゃんと萌ちゃんはノリノリで、蟹江先輩と尾上先輩は半場ヤケって感じで笑顔が引きつり、そして亀谷先輩は顔を真っ赤に染めて目を反らしていた。この人は抵抗あるんだな……
偏見になるけど私も亀谷先輩と同じだった。あの服恥ずかし過ぎる、着れたとしても皆の前で踊る勇気がなかった。
ただ皆凄く上手だった。そりゃプロじゃないし私もチアリーリングの事はよく知らないけど相当練習したんだろう、とても息があっててとても綺麗だった。
特にチアリーダーの萌ちゃんがひと際輝いていた。満点の笑みがこの良く晴れ渡った秋の空の下で輝いていた。
ポンポンを振る度って踊る姿を見るとどう言う訳か体の奥底からやる気が出て来たというか元気が溢れて来た。
元気100倍となった私達赤組は疲れなど忘れたかのように競技に励んだ。
そしてクラス対抗リレーでは去年活躍したお姉ちゃんや尾上さん達が再び注目の的となっていた。
そして私達赤組は見事優勝をつかんだのだった。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki