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ねとげ~たいむ・エキスパート!!

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 私達は街に戻ってきた。
 テリオさんは大きく両手を伸ばして深呼吸をした。
 アバターが深呼吸しても意味は無いんだけど、楽しんでいたなら何よりだった。
 ただテリオさんはこれで上がるみたいだった。
 プレイヤーズ・バーで少し雑談した後、私達は集会場を後にした。
 階段を降りるとテリオさんは頭を下げて言った。
「今夜は楽しかったです、ありがとうございました」
「また遊ぼうね〜」
「ええ、必ずね」
 テリオさんはエミルに言い返すと私達に背を向けた。
 でも私は聞きたい事があった。
「待ってください」
「え?」
 テリオさんは足を止めると私に振り向いた。
 そのテリオさんに私は近づくとその事を質問した。
 それは最後、時間切れ寸前で飛び込んだかだ。
 別にクエストがクリアできなかったからってやり直せば良い、それに今回は私達が無理を言って着いて来た。だから私達の責任になるだけでテリオさんが悪い訳じゃない。
 それにテリオさん1人ならもっと早くクリアできたはずだった。
 それを尋ねるとテリオさんは少し間を開けて来た。
「その事? だって諦めるのって嫌でしょう?」
「そんな事で? ただのゲームなのに?」
「スポーツもゲームも同じよ、例え負けるのが確定しても最後までやらなきゃいけないときもあるのよ…… それともう1つ、負けたくないじゃない」
 テリオさんは言った。
 テリオさんは小さい頃から勉強は苦手で成績はずば抜けて悪かった。
 体を動かす事が好きだったテリオさんはスポーツでは負け知らず、中学でも同じだった。
 そのおかげで危うかった高校入学も推薦でなんとかなった。
 でもそこまでだった。入学してからすぐ行われた体力テストでテリオさんは初めて屈辱の二文字を知る事になった。
 どの種目もテリオさんはあと一歩と言うところでお姉ちゃんに適わず、全てが2番目止まりになってしまった。
 勿論自分が日本一だともオリンピック選手になりたいとも思っては無い、ただ初めて味わう敗北に心が悔しさでいっぱいになった。
 お姉ちゃんがラクロス部に入った時も負けたくないと思い、友達になった時もいつか必ず勝ちたいと願っていると言う。
「悔しいじゃない、負けたままって言うのもね……」
 テリオさんは微笑した。
 私はテリオさんを誤解していた。
 確かにテリオさんはお姉ちゃんの友達で良い人だ。
 ただ意外な事に凄く負けず嫌いだった。
 まさに狼だ。強くて優しく誇り高い狼…… それがテリオさんだ。
「それじゃあもう行くから、また一緒に遊びましょうね」
 テリオさんはそう言うと画面から消えた。
 今度こそ本当のログアウトだった。
「なるほどね」
 何となくだけど分かった。
 あの人の強さの理由は『諦めない事』だった。
 例えどんな状況でも可能性が0に近くとも最後まで諦めずに希望を捨て無い事…… それはとても大事な事だった。