ねとげ~たいむ・エキスパート!!
ほんの刹那の事だった。
私も…… いや、ここにいる誰もが何があったのか分からなかった。
突然ミミックが轟音を立てながら爆発した。
『ギャアアアアアッ!!』
ミミックは悲鳴を上げながら黒い煙に包まれて地面に転がった。
でもそれだけじゃなかった。
「スキル発動ッ!」
突然ミミックの上から白いネットが現れるとミミックの上に覆いかぶさった。
ミミックは起き上がろうともがき苦しむが、ネットに絡まってうまく動く事が出来なかった。
皆一瞬の出来事に何が起こったのか分からなかった。
「これは…… 一体?」
私が首を傾げていると私が立っている少し前の空間に波紋の様な物が広がるとテリオさんが現れた。
「よし、何とか大成功!」
「テ、テリオさんっ?」
私は驚いた。
何だかテリオさんがミミックになったみたいだったからだ。
するとテリオさんが言って来た。
「突然消えちゃってゴメンなさい、でもこれを使うには索敵を止めるしかなかったのよ」
テリオさんが今使ったのは『潜伏』と言う技で、これを使うと一定時間モンスターに見つからないと言う効果を持っていた。
勿論まだ謎は残ってる、なぜ爆発したのか、そしてミミックを拘束している白いネットだった。
最初の爆発は火遁だろう、あの白いネットを被せたのもクリック・スキルで2回行動したからだろう、
するとテリオさんは自分の道具コマンドを開くとウィンドウの中の赤く四角いカーソルが1つのアイテムを照らしていた。
「粘り網?」
私はそれを読み上げた。
そのアイテムは攻撃力は無いものの、粘着物質の付着した網を投げつける事で相手の機動力を奪うと言う物だった。
私達は今まで相手を捕えるか速攻で勝負を付ける事しか考えて無かった。相手を遅くすると言う発想を思いつかなかった。
しかし次のターンで何もできなくなれば逃げ出してしまう、あくまでこのアイテムはその場しのぎだった。
するとセンリが言って来た。
「その場しのぎで十分、この借りは必ず返す!」
センリは神鳥の杖を構えると足元に紫色の魔法陣が現れた。
ただHP満タン同然のミミックに攻撃技を仕掛けても仕留められるはずがなかった。たとえここにいる人がまとめて攻撃したとしても倒すまでには行かないだろう。
ところがセンリの狙いは攻撃じゃなかった。
その訳はミミックの足元だった。
さっきの爆発で石畳が吹き飛んで下の地面が見えていた。
「グラビティ・バインドッ!」
センリの拘束魔法が炸裂した。
粘り布の上から大地の鎖が縛り付き、ミミックはたちまち拘束されて動けなくなった。
これで数ターンは動けなくなった。
後は私達の番だ!
「ブレイク・ダウンッ!」
レミが魔法を唱えた。
ミミックの頭上にレミの足元に浮かんでいる魔法陣と同じ魔法陣が浮かび上がるとそのまま下に降りて来てミミックを包み込んだ。
途端ミミックの上に盾に赤い下矢印が重なった防御力低下のマークが浮かんだ。
本来なら私とエミルは攻撃力増加技を選択した後にレミが攻撃力増加魔法をかけるんだけど、今回はそんな余裕が無かった。
「エミル!」
「分かった!」
私が叫ぶと私とエミルは一斉に飛び掛った。
そしてもっともダメージを与えられる技を選択して解き放った。
「スラッシュ・モーメントッ!」
「エミル・ラッシュ!」
私達の連続攻撃が炸裂した。
『ガアアァァーーッ!』
ようやくまともなダメージを与える事が出来た。
相手が素早くて逃げ回ると言う事は防御力は低く、HPも少ないと言う事になる。
私達の攻撃を受けたミミックは悲鳴を上げながら体をのけぞらせた。
そして最後の一撃が炸裂する。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki