ねとげ~たいむ・エキスパート!!
私達は別の部屋に移動した。
ここに来たのは何度目になるだろう。
幸いミミックはこの階層以外から出た事は無かった。
上に行く階段だろうと下に行く階段だろうと、ミミックがいた下に行く階段だろうと降りようとするだけで『今は行けません』とテキストが表示されて行く事が出来なかった。
つまりこの階層事態がバトルフィールドだった事になる…… 全く手の込んだ事だ。
そう考えているとレミが舌打ちをしてきた。
「そろそろ決めないと不味いわね」
レミに言われて私達は時計を見た。
タイムリミットはあと5分を切っていた。
私達だけならまだ諦めがつく、でも今回は私達だけの問題じゃない、迷惑のかかる人がいる。
何しろこのクエストはテリオさんの訓練用にローネさんが選んでくれたクエストだ。クリア出来ずとも本人は気にしないだろうけど、私達が無理についてきたようなモンだから私達の後味が悪い。
テリオさん1人なら何とかなったかもしれない、何とかテリオさんから学べるものがあればと思って着いて来たけど…… 何だかコレじゃ逆に足を引っ張ってるみたいだった。
私は気まずそうにテリオさんの方を見る…… ところが。
「あれ? テリオさんがいない?」
私は周囲を見回すがテリオさんの姿はどこにも無かった。
さっきまでいたはずなのに???
この階層はそれぞれ9つ部屋がブロック状に分かれている、はぐれるはずもない。
「どこいったんだろう?」
「まさか寝オチ?」
「そんな事無い…… と思う」
私は確信が持てなかった。
あの人は朝早くから起きてバイトしてる、それに部活もやってるから疲れて居眠りしてもおかしく無い。
とは言えあの人がいないのはさすがに痛い、何しろ索敵が使えるのはあの人だけだ。あの人がいないとミミックがいつ現れるのか分からない。
「まさか、やられたって事は無いわよね?」
「いや、やられたなら直ぐ分かる」
「やばいよ〜、今出て来られたら確実に誰かやられるよ〜」
エミルは心配そうに回りを見た。
何しろ私が今までミミックの攻撃を防げたのはテリオさんが敵が出るのを予測してくれたからだ。
これじゃ出てきた瞬間誰かがやられる…… そう思った瞬間、センリの背後にあった宝箱がミミックになると巨大な腕を振り上げた。
「センリっ!」
「っ!」
エミルが叫ぶけどもう遅かった。
私はガード・スキルを発動させようとするけど間に合わなかった。
センリに巨大な拳が振り下ろされた…… ところが!
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki