ねとげ~たいむ・エキスパート!!
その後も私達はミミックを追いかけた。
ミミックは空箱だけじゃなくて樽や木箱、はたまた道具袋にまで化けて私達を背後から襲って来た。
突然攻撃してくるミミックに私達は確実に先手を取られてしまった。
しかもこちらはダメージを殆ど与えていなかった。
私のスキルでガードした後、エミルとテリオさんがアクセル・スキルで先制攻撃をしてくれているのだけど、2人の与えたダメージを計算するとロクなダメージを与えていなかった。状況は向うの方が有利だった。
このクエストを始めてから50分が過ぎていた。そろそろ本気で決めないとタイム・アップだ。
そして今回もミミックに逃げられようとしていた。
私は慌てて技コマンドを選択した。
「ソニック・カッターッ!」
私の斬撃が空を裂いて煙幕に包まれたミミックを攻撃した。
でも相変わらず私の攻撃も空振りに終わり、煙幕を散り散りに吹き飛ばしただけだった。
するとエミルは地団太を踏んで悔しがった。
「あ〜〜ん、また逃げられた〜〜っ!」
「大丈夫よ、索敵の効果はまだ続いてるわ、次こそ倒して……」
「ちょっと待って、気になる事がある」
するとセンリが行って来た。
さっきから気になってる事があるらしい、それは何故ミミックが最初から索敵に引っかからなかった事だ。
この階に戻ってきてからテリオさんは索敵を使った。発動している間はモンスターの接近を知らせてくれる。
最初は反応は無いと言われた。それなのにいきなり反応が現れた。
索敵使用中はテリオ(尾上)さんのパソコン画面に現れる、見間違うはずが無かった。
「恐らく擬態中は索敵が効かないんだと思う、攻撃の一瞬だけ反応が現れるのかもしれない」
「はぁ? 何それ、意味無いじゃない」
「でも何もしてないよりマシだよ、でなきゃ大ダメージだし」
私は言う。
ミミックの攻撃の一撃一撃は大した事は無い、でも問題はクリティカル率だった。
あのモンスターのクリティカル率は異常に高く、物理攻撃に弱いセンリと防御なんてて微塵も考えてないエミルは一撃喰らっただけでリタイヤだった。
何とか捕まえる事が出来れば良いんだけど……
「センリの魔法やテリオさんの束縛技は使えないんですよね?」
「ええ、明るい場所が条件よ」
「私のは表じゃないと使えない」
2人は言った。
センリがいつも使ってるグラビティ・バインド…… すなわち魔法は自分のFPと自然界の力を融合させて放つと言う設定なのでダンジョン等の人工物の中では使えない。
テリオさんは『影縫い』と言う技はあるのだけど、これは光のある場所じゃないと使えない…… 以前私の知り合いの盗賊の子と戦った時はレミの浄化魔法の光を応用して使う事が出来たのだけど、神出鬼没に現れるミミックには使う暇が無かった。
「せめて動きさえ止められれば何とかなるんだけど……」
「これじゃ鬼ごっこの逆だよ〜」
「エミル、それは違う…… どっちかと言うと隠れんぼ」
「どっちかと言うと警泥じゃない?」
レミは言って来た。
警泥と言うのはその名の通り『警察と泥棒』の事で、警察役になった人が泥棒役になった人を捕まえると言う…… おにごっことかくれんぼが合体したような遊びだった。
ただ、地域によっては違うけどいくつかルールが存在する。
まずかくれんぼや鬼ごっこと違い、鬼(警察)は複数いて構わない、それは勿論逃げる人(泥棒)も同じ。
警察の方は追いかけるだけなのだけど、泥棒の方は逃げるだけじゃなくて隠れても構わない。
そして牢屋と呼ばれる場所を用意し、捕まった(タッチされる)ら牢屋に行って一歩も動いてはいけない。
さらに泥棒役は牢屋にいる仲間にタッチすると今まで捕まった泥棒達は全員解放(脱獄)されると言う物だ。
「どっちだって良いじゃん、最終的に探すの私達だし!」
エミルは目を吊り上げながら言って来た。
「良く刑事ドラマだと捜査網を敷くよね、そして犯人追い詰めるんだけどね」
「でもそれで捕まった人って確実に誤認なのよね、真犯人はむしろアリバイの完璧な人間だったりするのよ」
「それで最後は断崖絶壁で罪を認める」
私の言葉に続いてレミとセンリが言って来た。
「……一網打尽?」
レミの言葉にテリオさんが反応した。
(テリオさん?)
私は顔を曇らせた。
この言葉の意味が分からなかったからだ。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki