ねとげ~たいむ・エキスパート!!
私達は元来た道を逆送した。
するとレミが忌々しそうに舌打ちしながら言って来た。
「全く、戦わずにとんずらとはいただけないわね、男なら正々堂々戦いなさいっての!」
「レミ、ナメクジは雌雄同体、オスでもあるしメスでもある」
「えっ? 何? って事はオカマなの?」
「エミル、それは違うから……」
「何が? だって男だってんならチン……」
「エミル〜〜〜っ!」
私は顔を真っ赤にしながらエミルを止めた。
年頃の子なんだし、少しは羞恥心を持ちなさいっての、私は下ネタが苦手だ。
センリ達も顔を赤くしていた。皆如何わしい事を想像したんだろう、私も含めて……
私達は階段を上って9つに区切られた階層に出た。
テリオさんが索敵を使ってくれたけど、この部屋にはモンスターの気配は無かった。
首を振るテリオさん、私は部屋中を見回した。
「どこに行ったんだろう?」
冷静に考えてこの階層に逃げ込んだのは間違いない、何しろ一本道だったからだ。
ここにいないとすると別の部屋に行ったと見て良いだろう、だとするといつまでもここにいるのは時間の無駄だ。
テリオさんの索敵は一定時間続けられる、となると効率は悪いけどバラバラに探すより皆一塊になって探した方が良さそうだ。
私達は真正面の入り口を通って別のフロアに移動する。
でもテリオさんは再び首を横に振った。
「ここじゃ無いのか……」
「ったく、隠れんぼが好きなモンスターね」
「まぁ、元々擬態するモンスターだしね」
レミがため息をこぼすと私は苦笑した。
するとエミルが言って来た。
「はぁぁ、手っ取り早くここに出て来てくれれば良いのにな〜」
エミルは頭の後ろに手を回しながら唇を尖らせた。
でもそれは誰しもが同じ考えだった。
今までのボスはクエストの最中に体の一部が出て来て戦う事はあったけど、今回はまるで逆だった。
今回のはあちこち逃げ回るので別の意味で始末に悪かった。
そんな事を考えている時だった。
「まぁまぁ、ここは地道に…… ッ!」
「テリオさん?」
テリオさんは両肩をビクつかせて目を見開いた。
さっきまでの優しくて凛々しいお姉さんの感じから危険を察知した獣のような目つきになった。
私が訪ねるとテリオさんは周囲を見回してつぶやいた。
「……いる」
「えっ?」
私も周囲を見回した。
テリオさんに言われて他の人達も周りを見回すけど変わった所はどこにも無かった。
するとその時だ。私はエミルの後ろにある蓋の開いた宝箱の下箱の左右から巨大な腕が生えているのに気がついた。
しかし肝心のエミルはそれに気づいていなかった。
「エミル! 後ろっ!」
私は叫ぶとエミルは後ろを振り向いた。
すると巨大な腕が自分の頭上に振り下ろされていた。
するとエミルは目を見開いてスキルを発動させた。
「スキル発動!」
エミルはスルー・スキルで攻撃を回避した。
エミルの姿が消えてなくなると巨大な拳は空振りして床を砕いた。
その瞬間、ミミックの数メートル先にエミルの姿が現れた。
私達はエミルと肩を並べると得物を構えて臨戦態勢を取った。
「エミル、大丈夫?」
「へ〜き、へ〜きぃ!」
「ったく、面倒くさい野郎だわ」
「でもチャンスですよ」
「古人曰く『ここであったが百年目』、このまま一気に……」
センリが言いかけた瞬間だった。
何とミミックの全身から再び煙幕が噴出した。
また逃げる気だ。
「そうはさせないわ!」
テリオさんが技コマンドを選択する。
「火遁!」
テリオさんは右手を懐に入れると無数の飛苦無を取り出してミミックに投げつけた。
でも飛苦無は敵には当たらなかった。
煙が晴れるとミミックの姿はなくなってきた。
ミミックは逃げ出した。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki