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ねとげ~たいむ・エキスパート!!

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 数枚の金貨が宝箱にぶつかった。
 すると宝箱がガタガタと音を出して動き出すと姿を変えていった。
 全体がドロドロに溶け出すと5つの赤く不気味に輝く丸い目玉が浮かび上がり、その下に鋭い牙の並んだ剥きだしの臼歯の口、さらに体の横から3本の指の太い腕が生えたモンスターとなった。
 そしてモンスターの名前が表示される。

『ミミック』

 戦闘が開始されて皆それぞれの得物を手に取った。
「お宝その物がモンスターだった訳ね」
「ちょっと違うかな……」
 レミの言葉に私は言った。
 ミミックの場合モンスターが宝物に化けていたと言うだけで、宝物その物がモンスターって訳じゃない。
 そもそもミミックと言うモンスターは結構新しく作られた物で『擬態』を意味しているらしい。
 それを説明するとエミルが首を傾げた。
「ギタイ?」
「要するに、周囲の風景に溶け込む事を言うの、外敵から身を守る為のカモフラージュとか、捕食の為とか色々あるわ」
「つまりカメレオンみたいな物?」
「簡単に言うとそんな感じ」
 レミが言うと私はうなづいた。
『ガァアァアアーーッ!』
 するとミミックが攻撃を仕掛けてきた。
 大きく開かれた口から黒い煙が吹き出してその気色の悪い姿を覆い隠した。
「煙幕っ?」
「くっ! 見えないっ!」
 私達の視界が塞がれた。
 すると私達の頭に青い↓が矢が重なったマークが浮かび上がった。
 これは命中率が下がったと言う意味の印だった。
 どんな攻撃でも当たらなければ意味は無い、速攻で攻撃を決めるよりも先に敵の自由を奪ってからじっくり攻める…… 真正面から攻めるだけが正攻法ではなかった。
 でもこちらもただやられるのを待つだけじゃない、反撃の手はまだある。
「テラ・ライザーッ!」
 センリが魔法を唱えた。
 足元に紫色の魔法陣が浮かび上がるとセンリの神鳥の杖に稲光が走った。
 それを思い切り突き出すと無数の雷撃が龍のように尾を引きながら飛んでいった。
 だけど……
「なっ?」
 センリは目を見開いた。
 なんとセンリの雷撃は煙幕を突き破っただけだった。
 センリの魔法はそのまま壁を爆破しただけだった。おかげで黒い煙は消えてなくなって視界も戻った。
 でも肝心のミミックの姿がどこにも無かった。
「任せてください」
 するとテリオさんが技コマンドを選択した。
「索敵ッ!」
 テリオさんはダガーをホルダーに仕舞うと片膝と右手を床につけると目を閉じた。
 この技は簡単に言うと周囲に敵がいないかどうかを探す技で、モンスターのタイプや数、はたまた奇襲攻撃の回避する事も出来る。
 ところがテリオさんはため息を零しながら立ち上がると首を左右に振った。
「もうこのフロアにはいないみたい」
「じゃあ逃げたって事? ムカつく〜〜っ!」
 するとエミルが地団太を踏みながら叫びまくった。
「あんのナメクジ野郎どこ行った〜っ? ぶっとばしてやる〜っ!」
「このフロアで戦うんじゃないんだ」
 私はフロアを見回した。
 今まではダンジョンの最深部でボスが待ち構えていた。
 でも今回はボスが部屋から出て行った…… いや、逃げ出した。つまりここが対決の場所じゃないと言う事になる。
 私達はミミックを追いかけて部屋を飛び出した。