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ねとげ~たいむ・エキスパート!!

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 私達はバウスが根城にしていたと言う小島、通称『バウス島』へやって来た。
 しかし島と言うより海面から突き出た岩の柱とも言った方が正しいかもしれなかった。
 草木1本生えてないゴツゴツした岩肌の所々に砲撃用に作られたんだろう穴が開いていた。
 内部に入れる洞穴を発見すると私達を乗せた船は島の内部に突入した。

 島の内部は掘られた天井や壁が崩れ落ちないようしっかりと柱を打ち付けられ、切られた石を積み上げて作られていた。
 ここが使われていた頃は多くの海賊達の根城だったんだろう、でも今じゃすっかり荒れ果てて人っ子1人いなかった。
 しかし当然ながらトラップは生きていた。
 1歩進む度に鋭い棘が飛び出して来る床、毒の矢が飛んでくる通路などが私達の行く手を塞いだ。
 しかも本来の主である海賊に代わってこの無人のアジトに住むようになったモンスターもトリッキーな連中ばかりだった。
 背中の甲羅に無数のフジツボがついたような穴が開き、そこから黒い煙幕を噴出して獲物を撹乱させて噛み付いてくる人食い亀『スモッグ・タートル』。
 攻撃を仕掛ける度に膨れ上がり、HPが少なくなってくると爆発する蛸『バクダン・オクトパス』。
 宙を飛び、風を切り裂きながら獲物に襲い掛かる『シュリケン・ヒトデ』。
 うかつに攻撃できない敵や中々攻撃の当たらない敵が私達の行く手を塞いだ。
「ムッキ〜〜っ! 攻撃が中々当たらないぃぃ〜〜〜っ!」
 苛立ちすぎてエミルの頭から蒸気が噴出したように見えた。
 折角の課金アイテムも当たらなければ何の意味も無い、まさに無用の長物だ。
 とは言え私も人の事を言えた義理は無い、何しろ私の攻撃もちっとも当たらなかったからだ。
 レミとセンリは魔法がある、魔法による攻撃は必ず当たる、そして……
「スキル発動ッ!」
 テリオさんはカッと目を見開いた。
 すかさずベルトに固定されてる左右のホルダーから赤い帯が巻かれた柄、中央にある金色のサークルの中には狼の顔が刻まれた銀製の鍔、そこから獣の牙を思わせる半月型の刀身が生えたようなダガー、ハウリング・ブレードを逆手で引き抜いた。
 そして右足を後ろに引き、身を低くして構えると思い切り地面を蹴って走り出した。
 それはまさに刹那の出来事だった。
 モンスターの群れの中を疾風のごとく駆け抜けてゆくとモンスター達はピタリと動かなくなった。
 そしてテリオさんが足を止めるとまるで西部劇のガンマンの様にダガーを掌の中で回転させて腰のホルダーに収納した。
 途端モンスター達は倒れて画面から消滅した。
 テリオさんは暗殺者になってからと言うもの、即死系の技を習得していた。
 今使った『閃滅刃』と言うのは攻撃力は低いけど複数同時が可能となり、おまけに即死効果を持っていた。
 ただ即死の方は失敗する可能性もあるけど、テリオさんはそれをスキルでカバーしていた。
 このゲームのアバターのステータスには『lack』すなわち運と言う物がある、これによりアバターの攻撃の命中率やクリティカル率、はたまた敵攻撃の回避率などが決まる…… 盗賊職は全てのジョブの中で1番運が高いのだけど絶対じゃない、その為に使ったのがさっきのスキルだった。
 テリオさんの使った『ラック・スキル』は次のターンからしばらく狙われる確立が高くなる代わりに運の高さを底上げすると言う効果を持っていてそれにより閃滅刃の成功率を上げていた。
 ステージ・ボスには通じないけど、それでも確実に多くの敵を仕留めていた。