ねとげ~たいむ・エキスパート!!
それから学校に行って日直の仕事を始めた。
まず窓を全て開いて今日室内の空気を換気する、次に教卓の上の花瓶の水を取り替えると黒板を綺麗にし、黒板消しの粉を叩いて元に戻すと自分の席に座って日誌を書いた。
私の席は前から3番目の窓側だった。夏場は地獄だけどこれからの季節は天国となる。
さらに外の様子も良く見えると言うのも特権だ。ふと窓の外を見ると他の生徒達が登校する姿がポツポツ現れた。
その中にはお姉ちゃんの姿があった。お姉ちゃんも私と同じで現実世界でもツインテールだから遠目でも良く分かる。
多分クラスメイトなんだろう、友達が挨拶をすると、まるでお嬢様が『ごきげんよう』と言うかのごとく挨拶をする。
客観的に見るとお姉ちゃんが別の生き物に見える、このギャップの差はなんだろうと思った。
クラス中にクラスメイト達が集まる頃になると校門の前に教師達がやって来た。
そして遅刻寸前の生徒を注意しながら腕時計を見る、それは校門を閉める為だ。
私はスマホを取り出して時間を見る。
現在8時33分、後2分で予鈴がなり、さらに5分後には校門が閉じてしまう…… その前に来なければならない人がいた。
でもその人はやって来た。
空っぽになった自転車の前のカゴに荷物を入れ、制服に着替えた尾上さんは全力疾走でペダルを漕いで校門を潜った。
(良かった)
私はホッと胸を撫で下ろした。
それと同時に予鈴が鳴った。
その夜、夕食とお風呂に入った私はパソコンのスイッチを入れた。
そしてオンライン・キングダムにアクセスすると騎士コロナとなってクエスト集会場を目指した。
昼間はただの学生や社会人でもパソコンの中では誰もが冒険者、それがゲームだ。
皆勉強や仕事などでヘトヘトなはずなのに何故かプレイしてしまう、ほんのちょっとのつもりが気が付けば夜半過ぎなんて良くある事だ。
疲れててもゲームに没頭できるなら人間まだまだ余裕はあるって証拠だ。不景気な日本もまだまだ大丈夫そうだ。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki