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ねとげ~たいむ・エキスパート!!

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 森のステージを3週ほど回り、木々が密集したフィールドにやって来た。
 だけどやっぱりジャイアント・スパイダーの影は無かった。
 私達がため息を零したその時だった。
 突然私の頭上が暗くなると木の葉が落ちて来た。
 ふと上を見るけどやっぱり何もいなかった。
 空が葉っぱで隠れて見えないけど、やっぱり何もなかった。
「コロナ?」
「あ、ごめん…… 気のせいかな?」
 私は首を傾げながら再び歩き始めた。

 それから別のフィールドにやって来た。
 そこはさっきと違い結構明るかった。
 頭上を見上げると所々木々の隙間から星が見えていて、月光りがさしかかっていた。
 けど問題はそこじゃ無い、これだけ敵と遭遇しないとなると正直飽きるのを通り越して呆れて来た。
「ああっ、ホントどこいんのよ〜っ!」
「正直、あのまま解散した方が良かったんじゃない?」
「古人曰く『労多くして功少なし』」
 皆も同じ気持ちだった。
 ちなみにセンリの言葉は『苦労した割に成果が出無かった』…… ようするに『骨折り損のくたびれ儲け』と同じ意味だった。
 私の背後に無数の赤く不気味な光が灯った…… かのように見えた。
「えっ?」 
 私はふと背後を振り返る。
 でも光は消えていた。
 するとレミが尋ねて来た。
「どうしたの?」
「いや、何かいたような……」
 私が首は傾げた。
 するとエミルが眉間に皺を寄せながら元来た道を数メートルだけ戻って周囲を見回した。
「何もいないよ?」
 エミルは両手を上げる。
「おかしいな…… 本当に何かいると思ったんだけどなぁ?」
「コロナ、アンタ少し気にし過ぎじゃ無い?」
「そんな事…… ッ?」
 私は目を見開いた。
 生憎私のいる位置じゃ月の逆光の責で姿は見えないけど、何とレミの後ろに人間の握り拳くらいはあるだろう、5つに赤く輝く不気味な光と巨大な岩のような影があった。
 私はとっさに叫んだ。
「レミ、後ろ!」
「えっ?」
 レミが後ろを振り向いた。
 すると闇の中から大木くらいはあるだろう、4つの関節で繋がり先端が槍のように鋭く尖った巨大な爪が振り下ろされた。
 私は左手の盾を構えて叫んだ。
「スキル発動!」
 私の姿が瞬時に消えてレミの前に現れて攻撃を防いだ。
 スキルとはクエスト受注所で買って装着する事が出来る特殊能力だ。
 ジョブによって装着できない物もあれば装備している武器によって意味が無い物も存在する。
 ちなみに私が使ったのは『ガード・スキル』と言う物で、1ターンに一度だけ敵の攻撃から味方を庇う事ができる。
 誰でも装備できるのだけど、どうせ使うならこの中では防御力とHPの高い私が持った方が効果を最大限に発揮できる。
 このスキルをどう使うかもこのゲームの重要な鍵になっていた。
 私の盾が巨大な爪をはじき返す、だけど私は反動で私はその場に両膝をついた。
「コロナっ!」
「なにすんじゃ、ワレェェァアアァァ――ーっ!」
 レミは烈火のごとく怒りながらホーリー・メイスを振るいあげて反撃する。
 だけど影はその巨体に関わらず空高く跳び上がり、私達の頭上を飛び越えて広場の中央に降り立った。
 ステージのライトの様に無数の月明かりがそいつの姿をうつし出した。
『ギギギギ……』
 そのモンスターは左右から飛び出た白い牙と左右に分かれる下顎から金属を擦るような奇声を放った。
 全身が黒く巨大に膨らんだ腹、背中に6本の毒々しい棘が生えた腹、そこから生える8本の巨大な足のモンスターが姿を現した。
『ジャイアント・スパイダー』
 ステージ・ボスの名前が頭上に表示される。
 私達は一か所に集まって得物を構えた。
「ったく…… 女を背後から襲うとたぁ、ふてぇ野郎やで」
 まだ怒ってた。
 そんなレミを横に私は言った。
「と、とにかくやっと出て来たんだし、早く倒しちゃおうよ」
「古人曰く『朝の蜘蛛は仇でも逃がせ、夜の蜘蛛は親でも殺せ』」
「え? 夜じゃないといけないの? アタシこの間昼間に殺虫剤散いちゃったけど??」
「ああ、それは……」
 私は説明する。
 朝の蜘蛛は見かけるとその日が晴れたり人を呼んだりと縁起が良いと言われている。
 かたや夜の蜘蛛は泥棒の象徴として縁起が悪いとされている。
 ただ地方によっては両方とも殺さずに逃がすと言う所もあるらしい。
「どうでも良い! 蜘蛛なら昼だろうが夜だろうが知ったこっちゃないで!」
 今回は風当たりが強いなぁ、今のレミには逆からわない方が良い。
「と、とにかくさ、早く倒そう」
 私は言った。