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ねとげ~たいむ・エキスパート!!

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 現実は夜だと言うのに電脳世界は相変わらず真昼、しかも綺麗な青空が広がっていた。
 様々なアバターを横切りながら石畳の道を歩くと集会所を目指していた。
「皆、どうしてるかな?」
 あれ以来メールでも会話は無かった。
 今までもテストでゲームは出来ない事はあったけど、あんな事があった後だから皆も気まずいんだろう。
 今日は皆と会う約束をしている…… でも私の脳裏にあの時の皆の顔が蘇った。
 正直私もあの時の事を忘れる事が出来なかった。食事の時も寝る前もいつも皆の顔が浮かんでしまった。
 テストの時はなるべく考えない様にしてたけど、やっぱり所々で皆の事を思い出していた。
 でもいつまで悩んでても仕方が無い、まだ皆引きずってるようなら励まそう、何て言って良いか分からないけど…… 話をするだけでも十分救いになるはずだ。
 そう考えてた時だった。
「コロナーっ!」
 私を呼ぶ声が聞こえて顔を上げた。
 そこではエミルが手を振り、その後ろにはレミとセンリが立っていた。
 でも2人もこの間とは違い暗い顔をして無かった。
 するとレミが言って来た。
「コロナ、何かあった?」
「えっ? 何が?」
「いや、何か暗い顔してたからさ……」
 私がレミ達が暗い顔をして無いかどうか考えてたのに……
 私はふと尋ねて見た。
「別に、ただ皆メールとかしてこなかったからさ」
「ああ、アンタ達テストだったでしょう? センリと話してメールしなかったのよ」
「今回お母さんの目が厳しくてさ〜、近づこうモンなら鬼みたいな顔で怒るんだよ、ホントにまるで……」
 突然エミルは会話を止めて顔を強張らせると顔から滝の様な汗を流し、両肩を震わせて怯え出した。
 後ろ向きでも分かるだろうけど、私はその元を見てるから分かる、エミルの少し後ろにいるレミが右肩にセイント・メイスを肩にかけ、左手を腰に当てながら凄い形相で見下ろしていた。
 なお、レミのさらに背後では牛頭馬頭鬼が腕を組みながら目を光らせている幻影まで見えた。
 周囲のアバター達も怯え慄く中、センリが言って来た。
「古人曰く『少年老い易く、学成り難し』、私達は2人に勉強集中して欲しかった。エミルも赤点回避できたんでしょう?」
「ん、まぁ……」
「勉強って言うのは考える力を養わせたり、長い時間をかけて積み重ねて完成された事を知る事…… 無駄な事なんて何も無い」
 センリが言った。
 例えば歴史で戦争が出て来たとする、戦争は悲惨で絶対に起こしちゃいけない…… その意味や原因を知らなければ再び戦争が起こる可能性もある。
 他の教科にしても悪い人達に上手い言葉やお金を騙されたりしないようにとか色々な意味がある…… ただそれをどうするかは自分次第だと言う。
 するとレミが眉間に皺を寄せて尋ねた。
「いつもいつも思うけど…… アンタ、何者?」
「別に、ただ教師志望ってだけ」
「センリ、教師目指してたの?」
「言って無かった?」
「聞いて無いよ!」
 私は叫んだ。
 何とセンリはこの中で1番しっかりしていた。
 確かに頭良いし物知りだ。教師になるのはうってつけだろう、無愛想って所を除けば……
「ゲームでも学ぶべき所はある、この前のルナの時もそうだった」
 すると私は『あっ』となった。
 でも残りの2人は何も気にしていなかった。
「あのさ、2人供は何ともないの?」
「何ともって?」
「何かあったっけ?」
 レミとエミルが言った。
 首を傾げる2人に私はこの前の事を尋ねた。
 するとレミ達が言って来た。
「ああ、あったわね、そんな事」
「そうだっけ?」
 エミルはすっかり忘れていた。
 するとレミが言って来た。
「それで顔が暗かったんだ。でも良いんじゃない? 向うは向う、私らは私らなんだから」
「気にするなとは言わない…… 古人曰く『覆水盆に返らず』、過ぎた事はもうどうしようもない、だったら次こそ挽回するべき」
「そうそう、あんな凄い人達がいるんだもん、アタシ達だって強くなれば良いだけだよ」
 センリとエミルも言った。
 もう3人とも自分の答えを出していた。
 どうやら私は余計な心配をしていたらしい、って言うかズルズル引きずっていた私が恥ずかしかった。
 考えて見れば皆の言う通りだ。
 お姉ちゃん達がいくら強くても私達は私達、アバターが弱いなら強くなれば良いだけの事だ。
 私の心の中で渦巻いていた物が次第に晴れて行った。
 励ますつもりが逆に励まされた。いつもこんな感じだな…… でもそれが仲間だ。
 お姉ちゃんだって1人で強くなった訳じゃない、仲間達と冒険をして来たからだ。
 私も負けてられない、一刻も早く冒険したかった。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「今まで出来なかった分、思い切り暴れるぞ〜」
「コロナ」
 センリは私を見て微笑した。
 私も頷いて皆と供に集会場に向かった。
 私は今回の事で学んだ。
 今度こそ自分の役割を果たす、そして強くなる。
 そう『私達』のやり方で……