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ねとげ~たいむ・エキスパート!!

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 ローネさんが選んだクエストは『魔獣の洞窟』だった。
 このエクセリアからほど遠く無い山道でモンスターが大量発生し、道行く旅人や物資を積んだ馬車を襲って流通の障害になっていると言う。
 調査によるとモンスター達は山道にある洞窟に出入りしているらしく、モンスターを一掃して来て欲しいとの事だった。
 私達も同じクエストを受けると問題の山道へ向かった。

 洞窟に入るなり私達はモンスターに襲われた。
『グオオオーーっ!』
 いきなり雄叫びをあげて来たのは全身毛むくじゃらで私を3人分繋いだくらいの天井スレスレの巨体に2つの赤黒い目が輝く獣人ケイブ・マンだった。
 ケイブ・マンは5本の指を大きく開くと私達に向かって腕を振るい降ろして地面に叩きつけた。
 私達は左右に飛んでケイブ・マンの攻撃を交わした。
「チッ、いきなり攻撃か、毛玉風情が!」
「女の子をいきなり襲うなんてふてぇ野郎だ」
「そのとおりっス! 全ての毛ぇ毟り取って解体した後で酢豚にしてやるっス」
「えっ? 酢豚? これ食えんの? ってかこれ豚???」
「んな訳無いでしょ」
 ボケだらけのエミルにレミは言った。
 アルネちゃんは実家が実家だけにモンスターを食材に例えると言う。
 そんな中、私は膝を折り曲げたまま顎を引くとレイジング・ソードに手を当てた。
「下がっててください、ここは私が……」
「ちょっと待ちなさい、コロナ」
 私が立ちあがろうとした瞬間、お姉ちゃんが私を止めた。お姉ちゃんは腰に差してある剣を引き抜いた。
 それはまさに氷で出来ていると思いたくなるほど透き通った刃と青い刀身の中央にルーン文字が書かれ、鍔に六花の紋章が描かれたアイス・ソードのパワーアップ・バージョン、『フリージング・ソード』だった。
 その刀身に冷気が渦を巻き始めると、お姉ちゃんはケイブ・マン目がけて突進した。
「ストライク・ブレードッ!」
 お姉ちゃんの気合い斬りがケイブ・マンに炸裂した。
『ギャァアア――っ!』
 ケイブ・マンは斬られた箇所から凍りついて行くと巨大な氷の塊となり、最後は粉々になって砕け散った。
 やっぱりお姉ちゃんも前よりレベルが上がってる、技の威力も強化した武器の力とプラスされて十分に上がって……
 ってちょっと待て!
「お姉ちゃんっ!!」
 私は叫んだ。
 お姉ちゃんは振り返ると首を傾げた。
 何しろ今の技『ストライク・ブレード』は私が考えた技の名前だからだ。
「どう言う事よ? 何で知ってるのよ?」
 大体の見当は付く。
 良くお姉ちゃんは勝手に私の部屋に入ってシャーペンの芯や消しゴムやマンガを持って行ったりしている。
 私がゲーム内で使ってる技は私が中学時代に書いていた小説の主人公の物だ。
 今の技からして全部の技の名前を変更してあるのは間違い無いだろう、って言うか人が頭抱えて悩んだ技の名前をパクリやがって!
 いや、それ以前にお姉ちゃんは私が文芸部に入って小説を書いていた事は知ってるだろう、でも内容までは知らないはずだ。
 それを話すとお姉ちゃんが言って来た。
「ああ、夏休みに漫画返しに行ったら机の上にノートが置きっぱなしになっててさ、アンタは寝てたから起こすの可哀想だから少し借して貰ったのよ〜、でも許してくれるわよね? 私達は双子キャラなんだから」
「著作権侵害で訴えるわよッ!」
 片方の目を瞑りながら左手で頭を小突き、口から少し舌を出して悪戯っぽく笑ったお姉ちゃんに私は叫んだ。
 とは言え書いてたのは中学生の頃で何処の出版社にも持って言って無い…… しかも部活で書いた物(私にとっては過去の遺物)だから著作権と呼べるかどうかは怪しいモンだった。
 何しろ私の技のネーミングは少し前のエミルより劣ってるらしい、正直言ってかなりショックだった。
 
 周囲の人達が困惑しているので私は説明した。
 すると……
「別に良いじゃん、お姉さんとお揃いなんて、アタシ羨ましい」
「エミル、アンタは作家さんの努力を何だと思ってんのよ?」
「いや、作家って呼べるほどのモンじゃ……」
「いいや、その通りだ!」
 するとルキノさんが言って来た。
 そして私の前に立つと両手を私の肩に乗せた。
「妹ちゃん、君は見込みがある、作家ってのは必死に頭抱えて出来た世界を描く創造主だ。それを他人に奪われる側の気持ちは良く分かる」
「えっ? あ、いや、そこまで大した物じゃ無いんですけど……」
「何言ってんのよ、それだったらアンタだって似たようなモンじゃない」
 するとテリオさんが言って来た。
「著作権侵害ならルキノだって似たようなもんでしょう? 二次創作って人の描いたのを改造してるようなモンでしょう」
「二次創作?」
「バカにすんな! 二次創作だって立派な漫画だ。それに私達だって必死で頭抱えてアイデア出して描いてるんだよ」
「でもグレー・ゾーンでしょ? 描くなら1から描きなさいよ」
「それは、人それぞれなんじゃ……」
 私は言った。
 二次創作は書いた事は無いけど、それ自体を否定してる訳じゃ無かった。
 創作活動の練習になるし、同人作家からプロ入りを果たした作家さんだっている、自分のお金で出版するなら文句は言わない。
 そりゃ一般の作家さんにとっては迷惑だと思う人もいるだろう、でもどんな物を描くかは個人の個人の自由だ。
 するとルキノさんは私に言って来た。
「やっぱり話が分かるな妹ちゃん、君さえ良ければ一緒に組まないか? 一度私の漫画貸すからじっくり考えて……」
「ちょっとちょっと! 人の妹を腐の道に誘わないでよ、私のコロナの清い心が汚れたらどうしてくれんのよ」
「誰が私のコロナだっ!」
「心配すんな、百合だって完全なジャンルだ。私は薔薇の方が好きだけどな」
 ルキノさんは両手を腰に当てながら自慢気に言った。
 すると頭に無数の『?』マークを思い浮かべたエミルが首を傾げながらセンリに尋ねた。
「百合とか薔薇とか何言ってんの? お花屋さんの漫画でも描いてるの?」
「古人曰く『果報は寝て待て』」
「寝てれば分かるの? 夢で見るモンなの?」
「……そうじゃない、待ってれば自然に分かるって意味」
 それも少し意味が違う……
 って言うかセンリは『その意味』とやらを知ってるんだろう、頬を朱色に染めながらエミルに目を背けた。
 ちなみにその少し後ろでレミも頬を赤くしながら咳払いしていた。
「でもルナちゃんもルナちゃんよ、ちゃんと謝った方がいいんじゃない? 私だって自分の物を勝手に使われたら怒るわよ」
「へぇ、ローネでも怒るの、私見たこと無い」
「あるわよ、私だって人間だもの」
 テリオさんが言って来るとローネさんは鼻で笑った。
 そりゃ漫画じゃないんだから怒らない人間なんて存在しない、ただあまり怒らない人なら存在する。
 お姉ちゃんもあまり怒った事…… って言うか普段から私を怒らせていたから殆ど見た事が無かった。
 最後に見たのはいつだろう? 詳しい事は思い出せないけど、確認してるのは小学生の頃だ。
 公園の砂場で遊んでいた私にクラスのいじめっ子が蛇や蛙とかの玩具を突きつけて意地悪をしてきた。