ねとげ~たいむ・エキスパート!!
お姉ちゃんは私がこのゲームをプレイする半年前からプレイしていて、私をこのゲームに誘った張本人でもあった。
ただランクが違った為に同じクエストを受ける事が出来ず、ビギナー・ランクの終わり頃にようやく追いついて同じクエストを受ける事ができたのだった。
お姉ちゃんの装備も前と変わって立派になっていた。
やっぱりクラス・チェンジしているみたいだった。
「お姉ちゃん、いつの間に……」
私は眉を引きつかせた。
するとお姉ちゃんは一度立ち上がるとまるでステップを踏むかのようにエミルの後ろを回って私の後ろにやって来た。
そして手を伸ばして私の背中に抱くと顔を近づけて頬擦りしながら言って来た。
「アンタが見えたからよ、私達はやっぱり強い姉妹の絆で結ばれてるのね〜?」
「ちょ、気持ちの悪い事を言うなぁ!」
私は両手でお姉ちゃんの顔を引き剥がしながら言った。
でもまんざら外れでも無い、何しろ私の『コロナ』と言うアバターは実はルナそのままコピーした物だったからだ。
初めてプレイをする日に宿題が沢山出たうえに長引いてしまい、アバターを作る時もどうやって良いか分からずにお姉ちゃんを部屋から呼んで来て髪の色と瞳の色だけが違うアバターを作って貰ったと言う訳だった。
そしてお姉ちゃんがルナ(何でもその日に食べた夕飯が月見ソバだったかららしい)なので、月の真逆・太陽=コロナが誕生したのだった。
つまりこの仮想世界でも私達は姉妹…… 半年と言うラグはあれど、こちらの世界では双子の様な存在だった。
そんな事を考えているとレミが言って来た。
「久しぶりね、あれから元気してた?」
「はい、おかげさまで」
お姉ちゃんは私から離れるとレミとセンリに頭を下げた。
そっちの気にされた私はため息を零しながら尋ねた。
「それで、どうしたのよ? またソロ・プレイしてるの?」
「ああ、違うの、今日は……」
「ルナーっ!」
するとその時、4人のアバターが私達の方に近付いて来た。
今手を振っているのはサイド・ポニーのピンクの髪、袖が無いピンクのシャツの上から襟が立った黒い縁取りの白いケープと合体した短いマントを羽織り、右手には右の耳が折れた白い兎の頭を模した飾りが取り付けられた柄の短いステッキが握られていて、左腕に兎の尻尾みたいなフサフサした小さくて丸い物が取り付いたブレスレット、両腿にはピンクのソックスにヒールの高い白い靴を履いた魔術師…… と言うより魔法少女風の子。
その隣には右目だけが前髪で隠れたオレンジ色のショートヘアの上から深緑色のニット帽の様な物を被り、黒い半袖のシャツの上から深緑色の光沢を放つ肩と胸当ての防具、その上からオレンジのスカーフを巻きつけ、肘から下をテーイングしてその上から2枚のハサミ状のブレードが収納された手甲を装着し、黒いロングズボンを革製のベルトで固定して膝から下も深緑色の具足を履いた格闘士の子。
その隣には膝の関節まである黒い髪の先端を小さな緑の丸い髪留めで縛り、その上から小さな金色の亀甲が取り付けられた烏帽子を被り、首から下は時代錯誤と言うか場違いと言うしかない水干のような上着の上から黒い胸当てを装着し、足首まである袴にも似た赤いロングスカートと黒いブーツ、右手に翼を畳んだ黄金の鳥を模した金具の背中から大きな刃が取り付けられた柄の長い薙刀を持った神官の子。
最後はその中で1番背が高く、灰色で後ろ髪が針の様に鋭く尖った髪と額には黒い縁のゴーグル、パーカー付きの紫の半袖のシャツの上から灰色のベストを羽織り、両腕には指先が空いた黒い皮の手袋、腰に巻きつけたベルトの左右には金色の鍔と柄に半月型のダガーが装備され、黒い膝丈まであるタイツの上から灰色のホットパンツ、そして膝まである分厚く黒い皮のブーツを履いた盗賊の子だった。
「あ、皆、こっちこっちーっ!」
お姉ちゃんは4人に向かって手を振った。
その4人には見覚えがあった。
髪の色と装備こそ違うけど、皆文化祭で見たメンツだった。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki