ねとげ~たいむ・エキスパート!!
私達はクエストに戻った。
エンシェント・ドラゴンの化石をつるはしで叩き、ボロボロと落ちる欠片を回収して行った。
幸いこのフロアにモンスターはいない、作業も順調に進んで行った。
すると化石を手に取ったレミが言って来た。
「何で私達が化石掘りなんかしなきゃいけないのかしらね? こう言うのって男の仕事でしょうに……」
「仕方ないよ、そう言うクエストなんだから」
「大体肉体作業は男の仕事よ、女の子の私達には不釣り合いだってのよ」
「へっ? 女の子?」
エミルは眉間に皺を寄せた。
「何よ? 問題ある?」
するとレミは目を細めながら言い返した。
いくつか分からない(お酒は飲める年らしい)けど、心なしかレミの背後に金棒を背負ってヤンキー座りをしている赤鬼と青鬼の幻影が見えた。
私はガタガタと震えしたエミルの間に割って入った。
「ま、まぁまぁ、それよりもっと奥に言ってみようよ、まだ先があるみたいだし」
私は道を指差した。
私達は奥に進んだ。
辿りついたのは巨大なドーム状のフロアだった。
フロアに入った途端、私達は目の前にある『物』に目を奪われた。
それは今までの化石の2倍はあるだろう、上顎から背中部分が地面から露出したエンシェント・ドラゴンの化石があった。
しかもその化石は普通じゃ無かった。
「すっご〜い、金の化石っ!」
エミルは目を輝かせた。
何と目の前にあるエンシェント・ドラゴンの化石は黄金色に輝いていた。
「こりゃまた派手な化石もあったモンね」
「古人曰く『山高きが故に尊からず』、重要なのは外見より中身」
つるはしを肩にかけながらレミが言うとセンリが答えた。
この諺の意味は山が立派なのは高さじゃ無くて木々が多い茂ると言う意味で、外見が立派でも中身がおろそかならば意味が無いと言う教訓だった。
するとエミルが言って来た。
「そんなのどうでも良いよ! 早く採ろうよ! きっとすごいのができるよ!」
エミルはスキップしながら化石に近付いて行った。
そして勢い良くつるはしを持ち上げると渾身の力を込めて振り下ろした。
ガツン!
と言う音が洞窟内に響いた。
他の化石と同じくボロッ! と零れ落ちると思いきや、とんでもない事が起こった。
『グルルル……』
突然低い声がフロアに響いた。
途端暗い目の中に不気味な光が点った。
「えっ?」
突然私達の足元がぐらついた。
そして黄金の化石が動き出すと大地に亀裂が走って今まで埋もれていた黄金の手足が飛びだした。
それを大地に思い切り叩きつけられるとエンシェント・ドラゴンが固い地面の下から這い出て来た。
『グォォオオ―――ッ!!』
口を開けると咆哮が轟いて洞窟内を振動させた。
そしてボスの名前が表示された。
『スカル・ドラゴン』
採取クエストかと思いきや戦闘クエストだった。
画面が切り替わると私達は臨戦態勢をとった。
「やっぱこうなる訳か、簡単だと思ったのに」
「アタシはこっちの方が良いっ!」
私はため息を零すけどエミルは目が生き生きさせて喜んだ。
「古人曰く『世の中そんなに甘く無い』」
「ま、こうなったら仕方ないわよね」
センリ、レミも言った。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki