ねとげ~たいむ・エキスパート!!
センリって意外と大雑把な一面がある、誰よりも落ちついてるし、頭良いし物知りだけどけど、こうなるとエミルと同じだった。
さらにセンリは叫ぶ。
「スキル発動!」
センリの足元に紫色の魔法陣が浮かび上がり、さらにダブル・スキルの影響で巨大化した。
一度腰を捻りながら膝を曲げると雷鳥の杖を持った右腕を引く、そして膝と背を伸ばして立ち上がると天井高く突き立てて叫んだ。
「テラ・フリーズッ!」
冷気が吹き荒れるとフロアいっぱいの頭上に鋭く尖った巨大な氷柱が出来あがった。
そして雷鳥の杖を振り下ろすと氷柱は一斉にフロア中に降り注ぎ、パラサイト・ブロック達を一斉に貫いた。
たちまち体液もろともモンスター達は凍りついて粉々に砕け散る、だけど……
「あ、あいつ!」
すると私は見た。
一か所だけ、パラサイト・ブロックが別のパラサイト・ブロックを庇っていた。
つまり私のガード・スキルと似たような様な物で、本体が攻撃されれば別のパラサイト・ブロックが庇う仕組みになっていた。
ちなみに庇われていた本体は他の個体とは違って先端が吸盤のようになった尻尾の様な物が生えていて、そこから先の尖った黄色い胴体に緑の脈が浮き出た卵を足元に産みつけていた。
その卵はやがて孵化するとすぐさま肥大化し、他の個体と同じようになった。
それが終わった本体は次々と別の所に卵を産みつけて行き、その卵達もやがて孵化し始めると数が増えて行った。
こうして数を増やしていたんだ。でも本体が見つかれば後は簡単だ。
「エミルっ!」
「うんっ!」
センリに言われてエミルは本体目がけて走り出した。
大半のパラサイト・ブロックはセンリのおかげで数を減らす事が出来た。でも新たにパラサイト・ブロック達がエミルに向かって飛びかかった。
ここは私の出番だ。
「ソニック・カッターっ!」
私の炎の斬撃が飛ぶとエミルを攻撃しようとしたパラサイト・ブロック達が消し墨となる。
本体までの道は切り開けた。もうエミルを邪魔する物は無い。
それを確認したレミがホーリー・メイスをパラサイト・ブロック本体に向けた。
「ブレイク・ダウン!」
固まっていた時のパラサイト・ブロックにかけた防御力低下魔法が解けていたのでレミは改めて本体に魔法をかけ直す。
エミルのチャージの効果はすっかり消えてしまったけど、まだパワードの効果は生きていた。本来ならチャージと掛け合わす事が出来れば最高なんだけど、生憎そんな贅沢はできなかった。
エミルは間合いを詰めると大ジャンプ、右手を引くと青白い冷気が渦を巻きながら右腕に集まった。
「今度こそ、エミル・パーンチっ!」
エミルの強力な冷気を纏った正拳突きが炸裂した。
氷の鉤爪に貫かれ、右手が肘までがズッポリと体液袋を突き破るとパラサイト・ブロック本体の体内がビキビキと凍結し始めた。
『ギィィヤァアアァァ―――ッ!』
パラサイト・ブロック本体は断末魔を上げる。
やがて完全に氷の塊となったパラサイト・ブロックは粉々に砕け散って画面から消滅した。
残った卵も全て倒すとモンスターを一掃した。
「これで終わり!」
「アタシ達の大勝利〜っ!」
エミルは右手で握り拳を作ると大きく頭上に向かって突き立てた。
これでモウディビッグも元に戻るはず…… と思った瞬間だった。
突然私達がやって来た通路から海水が津波の様に流れ込んで来た。
「んなぁああ?」
「津波ぃっ?」
「古人曰く『地震・雷・火事・津波』」
「ええっ? オジヤじゃないの〜〜っ?」
「オジヤじゃ無くて親父…… ってかそんな事言ってる場合かぁ―――っ!」
飲み込まれた時同様のレミのツッコミも空しく、私達は津波に飲み込まれると反対側まで押し込まれ、そのまま海水と一緒に部屋から出て行った。
ちなみに地震・雷・火事・親父の『親父』の部分は実際は決まっている物では無いらしく、一説には台風を意味する『大山嵐(おおやまじ)』と言う言葉が使われているらしいけどホントかどうか分からない。
ただ津波などの災害以外にも『奥さん』や『お母さん』、はたまた苦手な物に書き変えられる事もあると言う。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki