ねとげ~たいむ・エキスパート!!
町は情報より酷い物だった。
かつては立派な建造物だっただろう民家や施設は無残に破壊されて瓦礫の山と化していた。
しかしまだ残っている建物には道具屋さんや宿屋さんが仮店舗として使っていた。
商人根性たくましいな、ただそのおかげで回復や物資の補給には困らなかった。
そんな町中を私達は歩いていた。町を見回しながらレミが言って来た。
「こりゃ派手にやられたものね」
「ホント〜、住んでた人達はたまったもんじゃないね」
「ゲームだから良かったわよ、これがリアルならきっちりケジメ付けさせてやる所だわ」
「どうケジメつけさせるの?」
「決まってるでしょ、一生カニ漁船に乗せて慰謝料稼がせるわ」
「えっ? マグロ漁船じゃないの?」
「いや、マグロ船じゃ生易しいわ、やっぱそれ相応の苦しみを与えなければ気が済まないっわ」
2人の会話に私はゾッとなった。
いつもは喧嘩ばかりしてる2人なのにさらっと怖い事を話してる……、カニ漁船とマグロ船……、どちらも儲かる仕事なんだけど過酷な事で有名だ。
何しろ一度航海に出れば数ヶ月は帰って来れず、怪我や骨折をしても陸地には戻れず、虫歯をしよう物なら麻酔無しでペンチで引き抜くらしい、しかも毎年何十人もの行方不明者や死傷者が出ていると言う。
まずマグロ船、マグロはおよそ250キロで24時間海の中を泳ぎまくる、つまり生きている砲弾を捕まえるような物で、船から海に放たれた延縄にマグロが食いついた際、手や足が絡みつくと物凄い力で海中に引きずり込まれてしまう、仮に助かったとしても腕や足が切断されて大怪我所じゃ済まない。
だけどカニ漁船の方はさらに過酷だ。1番の違いは天候、北極海にある『低気圧の墓場』と呼ばれるベーリング海の荒れ狂う海流や甲板にぶち撒けられた海水が凍り付いた着氷により3隻に1隻は転覆しているらしい、氷点下の海に落ちれば一巻の終わりだ。
通常女は断られるけど、私が男でもやりたくない、普通のolが1番だ。夢が無いと言われても構わない。
そんな事を思って時だった。目の前の瓦礫が破裂すると中からモンスターが現れた。
『ギシャアアアーーーッ!!』
『ガァァアアアーーーッ!!』
出てきた2色のモンスター達は雄叫びを上げる……、しかしモンスター達は互いに戦い合っていた。
戦ってる1体は体長3メートル、全身に真っ赤な炎が燃え上がる太い2本の腕のゴリラの様なモンスター『バーニング・コング』で、もう1体も体長はほぼ同じくらいだろう、額からは鋭い5本角と背中に鋭い氷柱が生えた甲羅を持つ海亀の『ツンドラ・タートル』だった。
レッド・コングは大きく吠えながらドラミング(手で胸を叩く事)すると大きく開けた口の中から紅蓮の炎を噴き出し、ツンドラ・タートルも口を開けて吹雪を吐き出した。
炎と冷気のブレスがぶつかり合うと爆発すると凄まじい突風が吹き荒れて周囲の瓦礫が吹っ飛んだ。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki