ねとげ~たいむ・エキスパート!!
数ターン後、私の耳にエミルの声が入った。
「コロナ! 終わったよーっ!」
私が振り向くと体が青く発光するエミルが右手を振っていた。
前のターンでチャージを済ませた証拠だ。
さらにセンリと頭上には赤い↑印に青い水晶が付いた茶色い杖が重なったマークが浮かび上がっている、これは魔法力強化の証しだった。
レミの補助魔法の中に一時的に魔法を強化する『ライジング』と言う魔法がある、今回はそれを使ったらしい…… つまりセンリも今の私達と同じ効果を持ってる事になる。
「古人曰く、『塵も積もれば山となる』…… スキル発動!」
最初に動いたのはセンリだった。
センリが雷鳥の杖を掲げると足元に魔法陣が浮かび上がる、するとその魔法陣がさらに大きくなった。
センリが使ったのはダブル・スキルと言う物で、次のターンに魔法が使えなくなる代わりに現在使用する魔法の威力を2倍にすると言う物だった。
魔法陣のサークルからスキルの影響を受けて紫に変色した炎が鎌首を立て飛び出すと、センリを中心に螺旋を描いて雷鳥の杖の先端に集まった。
その炎は運動会の競技で使う大玉の3倍の大きさはあろう、まるで太陽をコンパクトにしたような大火炎球になった。
だけどこれでもジャイアント・スパイダーは倒す事は出来ない、でもそんな事は分かってる。
センリはレミを見た。
「レミ」
「ОK、リフレクションッ!」
レミが魔法を唱えた。
途端レミの足元に魔法陣が浮かび上がり、サークルから金色の光が飛び出して円柱状の壁となった。
この魔法は相手の魔法やブレスなど直接攻撃以外の攻撃を跳ね返す魔法だった。でも今回防ぐのはモンスターのじゃ無かった。
「ギガ・ファイザーッ!」
センリの魔法がレミに向かって放たれた。
轟音を立てながら紫色の大火球が飛んで行くと同時にレミが叫んだ。
「スキル発動っ!」
レミが目を見開くと足元の魔法陣がセンリ同様巨大化する。
レミが使ったのは『リターン・スキル』と言う物で、自分が受けた攻撃を2倍にして跳ね返すと言う物だった。
だけどデメリットも存在する、今回は反射魔法がかかってるからノー・ダメージで済むけど、物理攻撃だったらダメージをくらってしまうし発動できるのは1クエストで3回までと言うデメリットも存在する。
レミの魔法障壁とセンリの魔法がぶつかりバチバチと火花を立てると火球に金色の光が吸い込まれて行き、紫と金の2色に変色するとセンリの魔法がレミのスキルによりさらに強力な物になった。
通常の反射魔法なら術者であるセンリに攻撃が跳ね返るけど、リフレクションに上乗せしてあるリターン・スキルにはもう1つ特性がある、それは跳ね返す対象を別の誰かに移し替える事が出来る事だ。
そしてそれもモンスターじゃ無かった。
「スキル発動―っ!」
エミルは右手を高々と掲げてスキルを発動させる。
だけど2人とは違い何の反応も起こらなかった。でもちゃんと効果は発動していた。
準備をしていたエミルが両膝を曲げて特撮ヒーロー真っ青なくらいにジャンプする、同時にレミがエミルに向かって大火炎球を放り投げた。
「頼んだわよ!」
「うん!」
エミルは頷いた。
迫って来る大火炎球にエミルは空中で体制を整え直して技コマンドを選択した。
「エミル・カウンターっ!」
エミルは両手を伸ばして大火炎球を受け止めた。
これは元々『反撃』と言う技で、自分に与えられる攻撃を現在の自分の攻撃力とプラスして跳ね返すと言う技だった。
結構便利なスキルなんだけど、エミルは一度も使った事が無かった。
なぜならエミルは素早く動いて倒す事しか頭に無く、さらにはモンスターが自分を攻撃するとは限らないので覚えてから今までこの技を使おうとはしなかった。
しかもこの技は物理攻撃しか使えない、しかし今のエミルなら跳ね返す事が出来る、なぜなら事前に使ってあったスキルのおかげだったからだ。
エミルの使用したスキルは『チョイス・スキル』と言う物で、攻撃目標を失敗した時に再び攻撃を選択できると言うスキルだった。
本来なら誰しも見向きもしないスキルなんだけど、エミルは変わった物が好きと言うか…… カードを集める子供(実際中学生)みたいに装備できるスキルは全て極めたいと言って購入した。
まさかこんな使い方があるとは思わなかった。
そしてエミルが受けとめた大火炎球に青い色が加わり、3色となった大火炎球が私に向かって放り投げた。
作品名:ねとげ~たいむ・エキスパート!! 作家名:kazuyuki