刻苦労知す
あぁ、でも……。
ボクはもうそういう快適な所には行けないかもしれません。
ある食べ物に齧りついたら 喉が渇いて渇いて仕方がないのです。
水を探して、隙間から出てきたところに あの気配が迫ってきたのです。
ボクは、知っている。
先日、あの気配に仲間が追いつめられて 追い回されて打ちのめされたことを知っている。
怖くて怖くて。
バシン! パンパンパン! パン! ・・・パン! グッ。
激しく嫌悪する音でした。
ガサガサ ガサガサガサ ガサガサ
その足音は 尋常なものではありませんでした。
ブーンと翅音もしたかのように思いましたが、突っ走っているだろう足音がしていました。
それが、消えた…
そして、どこかを開けた音…
キィ。ザザァー。バタン。
「やったね!」
怖くて怖くて。
あぁ、もう語らっている場合じゃないかもしれない。
そろそろ、ボクが動き回っても大丈夫だろうか?
隙間から触角で確かめる。先ほどまでの気配はなかった。
ボクは、意気揚々と水を求めて隙間を離れた。喉の渇きが増してくる。
早く、早く…
自慢の俊足もなんだかうまく進まない。
これまでなのかなぁ…
いや、まだあきらめない。まだ自由が始まったばかりなのにあきらめたくない。