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ツイスミ不動産 物件 X

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 この言葉を受けて、店舗内はしばらく、――、シーン。
 ツイスミ不動産の二人は脳内でのみブツブツと繰り返す、「無菌、無菌、無菌」と。
 そしてその帰結として、「このご時世、長い人生の旅路の果ての住まい、それはやっぱり……、無菌だよな」と納得する。
 されども無菌ハウスなんて、過去に扱ったことがない。
 不動産屋二人がド真剣に「うーん」と唸ってると、奥様からさらに。
「あっら〜、あんたたちプロでしょ。コロナがいないところで人生を全うしたいの、そんなツイスミを探してください」と。
 こう念押しされたカサリンとクワガタ、「イエス、クイーン」と頭を90度の角度まで下げざるを得なかったのだ。

 こんな経過で、カサリン/クワガタ・コンビは無菌ハウス物件を引き受けた。顧客第一で奮闘するしかない。
 一方コロナで客足が遠のいてる。幸いにも探索に充分時間をさけた。
 その結果、1週間後には見つかったのだ。
 早速無菌大好き夫妻に連絡を取ったら、旦那からは「ヨッシャー!」、奥さまからは「あっらー!」と口癖の返事があり、現地確認の運びとなった。

 5時間のドライブ後、今四人は高台の上に立つ。
 早速、紺王子が「川向こうの迫り来る山々、その山裾の一部に平らな所がありますよね、そこにポツリポツリと家が見えませんか、あそここそが俗界から隔離された無菌ビレッジです」と指を差す。
 その方向に夫人は双眼鏡を向け、「あっら〜、ピンクの花々、あれは桃の花ね、まるで桃源郷だわ」と声を上げる。それから「あなた、覗いてごらんなさいよ、素敵だわ」と声のトーンが高い。
 主人も渡された双眼鏡で、「山からの小川に水車小屋があったり、山羊たちが遊んでいたり……、まことにシャングリラだな」と興奮気味。