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ツイスミ不動産 物件 X

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 花鳥風月…って、なんと高潔無比な!
 俗界、不動産屋の二人が恐れ入りましたと、歩調を合わせ、三歩後退りをする。
 しかれども女鬼課長はプロ中のプロ、一歩、二歩、三歩と元に戻り、提案する。
「長い旅路の果てに着地する終の棲家、そこには花鳥風月がある。探してみせましょう」
 これにニコリ、波瀾万丈に生き延びてきた男がたった一回だけヤニっぽい前歯見せたのだった。

 3週間後、紺王子が四駆のハンドルを握る。助手席には笠鳥課長、後部座席には幾星霜を共に重ねた老カップルが揺られてる。
 もう幾つの山を越えて来ただろうか、そして疾風の如く草原を突っ切り、目的地へと到着。

「ここは白龍沼です、インスタ映えの地ですよ」と水際まで案内した紺王子が自慢気に話す。確かに水面に雪の連峰が映り込み美しい。
「この風景は水鏡ね、月もリフレクトするでしょうし、薫風に野鳥が翼を広げる。あなたこの辺りに着地しましょうか?」と婦人が男の気持を訊く。
 これを受け、顔に燻し銀のような光沢を持つ男が初めて発する。
「鳥、風、月はあるが、ここには花がない」