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ツイスミ不動産 物件 X

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「あそこに並ぶ住宅こそがお目当ての終の棲家です」と笠鳥課長が指を差す。
 そこへと視線を移したシニアカップル、「え、えっ」と声を洩らす。あとは鳩に豆鉄砲状態に。
 それもそのはず美しい湖にいくつもの家屋が浮かんでる。
 さらに焦点を合わせると、それはどうも大きな筏(いかだ)の上に建っているようだ。

 男はド肝を抜かれ、無言。
 だが横の女が訊く、「水上生活なの?」と。
「湖上にプカプカと浮かぶ50坪の筏ホーム、スクリューなしですが、移動したい時は管理事務所に依頼すればタグボートで牽引してくれます。すなわちこの広い湖の真ん中にも行けて、そこでウォータヒヤシンスのような日常が味わえます」

 カサリンが興奮気味に答えると、さらに紺王子がワントーンをアップさせて。
「浮き草のような浮遊暮らし、それは湖を囲む山に昇る朝日とともに起床し、昼は釣り糸を垂れ、夕陽とともに渡り来る微風を感じながら身も心も茜色に染まる。夜は湖上の静寂(しじま)の向こうに流れ星が一つ二つと。私も鬼女課長から逃れ、そんな生活がしたーい、あ〜あ」と。

 どうもこの最後の溜息が余計だった、横に立つカサリンから肘鉄が鋭角に入る。イテーと唸るが、客はそんな事はどうでもよい。
「これぞ探し求めてきた終の棲家、天晴れ!」と御主人様が日の丸扇子をたかだかと振る。