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柴犬まるの酒屋日記

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智樹が作った広告が功を成して、新商品のワインがよく売れた。
また店のお客さんの年齢層が少し若くなったような気がするんや。
オイラの気のせいか?

また、ワインの会社の営業さんがこの頃よく店に来る。
今日も来月発売の冷酒を持ってきて、母ちゃんと2人で試飲していた。
営業さんは智樹に言ってた。
「このご時世ですからね。外で呑むより家で呑んだ方が安くすみますし、特に女性はフラっと1人で呑みには中々行けませんもん。この前のワインの広告もよかったし、また智樹さん作って下さいよ。今度は女性向けで!」

営業さんが帰ってから、母ちゃんと智樹は話をしていた。
「営業さんが言うてる事は一理あるな。昔ほど敷居は高いことないけど、まだ1人で店に入って呑むって人は少数やし」
「うん。あぁ!母ちゃんエエこと思いついたわ。母ちゃんは料理得意やん。父ちゃんがよう酒のアテに食べてたのをアレンジしてや。で…俺に一度食べさせてくれへん?」
智樹は何やら思いついたようだ。

この頃、智樹は仕事の合間にノートパソコンしてる事が多かった。
以前は、配達の時に前は集金袋代わりのウエストポーチ(中は伝票とかお釣り)だけやったのに、最近はもう一つカバンが増えた。それも結構重そうやったけど?
また母ちゃんも営業に行く時は、そのカバンを持って出たな。
また‥店の中も外も智樹が作ったモノが増えていった。

智樹が店番していた時の事やった。
「こんばんわぁ」
エライ若い女の人の声やな?
また店先に座っていたオイラにもご挨拶してくれた。
「あなたがまるちゃん?ポスターのまるちゃんもかわいいけど、実物もかわいいわぁ。なでてもエエ?」
この人はオイラと同じ目線になるために、店先でかがんで手の甲をそっとオイラの前に出した。
(あぁ‥この人は犬を知ってる人やな!犬飼いの人はこうするんや)
オイラはご挨拶に、そのお姉さんの手をペロッと舐めた。
「ありがとう!あぁ‥このポスターのお酒ありますか?」
今度は智樹に向かって笑顔で言ったお姉さんやった。智樹はその笑顔にヤラれたのか、ちょっと顔が赤かったぞ。
(ウブやなぁ‥オタクの智樹やもんな。後で母ちゃんに教えたろ)

「あ‥ありがとうございました。また寄って下さい」
智樹はちょっとドモったけど、引きつり笑顔でお姉さんに言った。
「はい‥今度友達も連れてきます。この冷酒についているレシピも美味しそうやし、ありがとう。オマケまでもうて」
お姉さんは智樹が作った【まるポスト・カード】を手に取って笑った。

智樹‥そんなまで作ってたんか?また‥イツ撮ったんや?
オイラのお昼寝姿なんてさ!オイラ的にはもっとカッコイイ・キリリ姿を撮ってほしかったな!ま‥エエけど。オイラも酒屋の看板犬やから。

智樹はお姉さんが帰ってからも、ちょっとボォーッとしてた。それも赤い顔してな!
外から帰って来た母ちゃんが智樹を見て不思議がっていた。
「まるぅ‥智樹どないしたん?顔赤いけど」
オイラは人間語は話されへんからな、尻尾だけ振ってお返事した。

作品名:柴犬まるの酒屋日記 作家名:楓 美風