柴犬まるの酒屋日記
それからと言うもの日に日に女性客が増えた。嬉しい事や‥
オイラは智樹がノートパソコンをしてる時に、そばに行って。
前足を智樹の足に置いて、画面を覗き込んだ。
「なぁ‥まるぅ!女の人も家で呑みたい時もあるんやな。俺は呑む時はあまりツマミは食べんけど。女の人は酒も呑みながら美味しい物も食べたいんやな。母ちゃんが作ったツマミをミニ・レシピにして冷酒につけたのが良かったな」
その時の智樹の顔は、嬉しそうやった。オイラも嬉しいわ。
息子の智樹が一生懸命に店の事を考えてくれている事を‥
また母ちゃんも喜んでいる事も。
こんな事もあったな!そういや‥
この前来たお姉さんが、友達を連れてまた店に来てくれた。
またその友達も犬好きで、オイラを可愛がってくれた。
またオイラも、ここの店の看板犬やし。
ここで愛嬌振りまいた。また店に来てもらいたいからな!
一生懸命‥尻尾振って【まる・スマイル】で営業したで。
オイラの営業活動もあって、お姉さんらにウケたな!
そのお姉さん達の笑い声に、智樹と母ちゃんも笑ってた。
あぁ‥最近な。母ちゃんが声を出して笑うようになったんや。
お客さんの前では笑ってるけど、父ちゃんがおらんようになってからは、
家の中では笑わんかった。智樹が帰って来てからも笑わんかったのに。
オイラは母ちゃんが笑ってるのを見るのが好きや。また智樹も笑ってるのもな。
そのお姉さん達は、母ちゃんにもっと「おつまみ」レシピを教えて欲しいそうや。
母ちゃんは手を振って‥
「そんな人様に教えるような」ってビックリしてたけど、
「イエイエ‥あのレシピの料理とても美味しかったし。教えて下さい」
って‥お姉さん達に頭下げられちゃってさ。
「母ちゃん‥エエやん。お引き受けしぃ」
あの無口な智樹が母ちゃんに言ったのは、オイラは驚いたわ。
母ちゃんは智樹の後押しもあり、お姉さん達にオツマミ料理教室をする事になった。
また、智樹もアシスタントとして母ちゃんの横におる事になった。
務まるんか?智樹に‥
オイラはちょっと心配になったけど‥(@_@;)
まぁ‥母ちゃんが横におるから大丈夫かな?
また、帰り際に智樹の手には小さいメモが握られていた。
そのメモを握り締めていた智樹の顔は赤かった。
智樹はそのメモを手に広げては、また顔を赤くしたんや。
オイラに文字が読めたらよかったんやけど‥どうやらそのメモの内容は!
智樹にとっては嬉しい事やったみたいや。
それから‥智樹は普段メールなんかせえへんのに。
1日数回‥携帯電話でメールを打つようになった。
相手は‥あのお姉さん!葉菜子さんや!
39歳の智樹にも【春】が来るんかな?
オイラは微力ながらも、智樹とお姉さんを見守る事にした。