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HAPPY BLUE SKY 婚約時代 7

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1−9
俺は一美がサニタリーに行った時に、さとにラインした。さとは今日は非番なのだ。昨日の外出の時にモノレールの改札でさとに逢った。さとには今度の非番の時にバイキング料理を食べさせることで、コタロウの世話を頼んだ。一美がディナーを作るとは言ってたが、タマにはこういうことも、いいだろう。
「‥コタロウはさとの所にいるの?」車に乗り込んできた一美に話した。
「うん、今日は何も予定ないからいいよって言ってくれた。それに婚約してから何かと忙しくてさ、タマにはいいだろう。どこか行きたいところあるか?」一美の顔が輝いた。
「いいのぉ?うんうん‥いいよね。じゃぁ‥ここに行きたい!」
一美はダッシュボードのボタンを押して、マップを広げた。
1時間後‥俺の車は郊外の植物園にいた。一美はバックの中から愛用の一眼レフデジタルカメラを出して、植物を撮影していた。またいいショットが撮れたら、口元だけスマイルしてシャッターを切る。そしてファインダーを覗いて、満足そうにうなづく。それだけだが、俺はそんな一美を見ているのが好きだった。
「うわぁ‥近くで見ると細かい模様が入ってる。雑誌とかで見るのとは違うね!うーん‥スケッチもしたいぞ」
またバックの中から、アイテムを出して今度はスケッチをする一美だ。見ている方も飽きないよ。この植物園で一美はスケッチ2枚と50枚の写真を撮った。
「大分たまったか?一美ちゃん植物図鑑の写真とスケッチ」
「うん。写真は100枚超えて、スケッチブック2冊目になったよ。」
「休みの間に、俺がパソコンで植物図鑑のフォーマット作ってやるよ。また親父に見せてやってくれ。喜ぶから」一美は俺の手を握って嬉しそうに笑った。
植物園を出て、市内に帰るのかと思えばクゥの車はさらに北上した。
「どこ行くの?」と聞いたら‥
「着いてからの楽しみにしておけ」と言って教えてくれなかった。
北上すること30分‥森の中のホテルに到着した。
「ここに今日泊まろう!行くよ‥ホテルの部屋にアニメティグッズあるから大丈夫だ」と言って、車のエンジンを停めた。
クゥはいつリザーブしたのだろう?年末によくリザーブが取れたものだ。
「いつリザーブしたんだ?よく年末に取れたもんだと思ってる?」
「うん。」クゥは私の手を握りながら‥
「一美がいつも言うじゃないか。ダチコネっていいね!俺にだってダチがいますよ。ホテル関係にもね」
「なるほどぉ‥わかりました。ありがとうね‥クゥ」
私もクゥの手を握り返した。

クゥがフロントでサインをしている時に、私は辺りを見回した。フロント横の壁に「プラネタリウム」のポスターが目に入った。地下シアターホールで開催しているそうだ。私はそのポスターにすっかり見入ってしまって、クゥに呼ばれたのに気づかなかった。
「プラネタリウムのポスター見ている方がそう?」
フロントで宿泊手続きをしていたホテルスタッフがクゥに声をかけた。
「うん。自然物が好きでね‥星座に植物に動物が大好きだ。今日ありがとうな。急なのに口利いてもらって」
「イエイエ‥キャンセルがあったからこっちも助かった。あ‥コレ俺からだ。おまえ得意だろ?星座関係!頑張って説明しな」
ヤツの手から、プラネタリウムのフリーパスをもらった俺だった。
俺と一美はそのまま地下のレストランに行ってディナーを食べた。
「明日は一美お手製のビーンズ一杯のシチューにしてくれ。後、ポテトサラダとこの前作ってくれた、ローストビーフも食べたいな」
「はい‥ラジャーです。フロントで対応してくれたのがダチ様ですか?」
「うん。アイツはハイスクール時代のダチだ。細身だが、腕っぷしは強いぞ。アイツ‥父親から拳法習ってて、ケンカ売ったヤツは一発でダウンさせるんだ。俺も一度その拳法の足蹴り食らって、壁までぶっ飛んだ。それ以来冗談でもヤツには絡みません。」
「しない方がいいね。一美の合気道とどっちが強いかな?」
「ま、俺は一美さんの方が怖い‥イエ‥強いと思っているからね。ッテェ」一美はテーブルの下で俺の足をツネった。
ディナーが終わってから、俺は一美の手を引いてプラネタリウムホールに行った。そりゃ一美は喜んだ‥
「見たかったんだ‥日本に居る時はそんなの見に行けなくて、N国に入国してから1回だけ見に行ったの。それっきり以来だ」
「あ‥隣駅の小さなプラネタリウムホールか?まだやってるんだな。俺達も学生時代に行ったよ。昼寝にな!」
「わかるわかる!星見てていつの間にか眠った事もあったわ。吸い込まれるって言うの?」クゥはうなづきながら、言った。
「うん、また吸い込まれるように眠ると目覚めも気持ちいいんだ。」
また一美もうなづきながら、笑った。
ここのプラネタリウムホールは、パーテーションで区切られていた。俺達が案内されたシートは2人用だった。一番奥のパーテーションだった。
「おぉ‥いい設備だな」
パーテーションで仕切ったスペースは、リクライニングチェアーではなくラグマットが引かれて大きめのクッションが置いてあり、横にはハーフケットが置いてあった。
「ホントだ。プラネタリウムってシートを一杯に倒して見るよね?」
「うん。俺なんかタッパがあるから足が前のシートに当たるんだよな。これはありがたい。足伸ばして見れるよ」クゥは嬉しそうだった。
プラネタリウムの天井は冬の星座を映し出していた。クゥは星座を指さしながら、私の耳元で解説してくれた。またその解説も分かり易くて、その星座にまつわる話もしてくれた。後で聞いたら、大学時代に天文学の講座を取っていて、自宅では季節ごとに望遠鏡で星座観察をしていたそうだ。ボンバード家の自分の部屋に望遠鏡で撮影した写真・観察記録を残していると私に言った。
「ホント‥満天の星空に吸い込まれそうだね」
「うん‥日常の生活や騒音が頭の中から消えて行くのがわかるよ」
クゥの手は私の手を握った。また自分の胸に私の顔をつけさせた。クゥのあの大きな掌で私の頭をなでてくれた。
「結婚しても‥こうやってプラネタリウム見に行こうな。一美の大好きな映画も見に行こう。時間作って」
「うん。見に連れて行ってね。約束だよ‥クゥ」
「うん。約束する‥」
私とクゥは、プラネタリウムが映し出す満天の星空の下で、唇を重ね、お互いの背中を抱きしめた。