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HAPPY BLUE SKY 婚約時代 7

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1−10

プラネタリウムが終わり、最上階のラウンジで一美と呑んだ。今日はこのホテルに泊まるから、俺も一美も呑んだ。冬休み中とあって、心も体もリラックスしていた。元部下の一美と研修生時代からの想い出話に花が咲き、ラウンジのボックス席で俺と一美は声を押し殺して笑った。
「おまえは俺がいないと、裏で何やってるんだ?裏番のカッジュさん」
「エェ‥何の事ですか?裏番って何?よぉく言いますね。20代半ばまで「ファイン支部の隠れボス」なさってたんじゃないですか?悪がきのクゥさん」クスクス笑いながら俺に言った一美だ。
「‥誰に聞いた?」
「大佐と部長です‥この前、スーパーパフェ食べさせてもらった時に」
「スーパーパフェって何だ?また中通のビッグパフェか?」
「はいぃ。大佐がお茶しようって誘ってくださって。部長も一緒について来られました。その時に聞きました。大佐がパーティで悪がきクゥさんの悪事バラすから、楽しみにしておけと言ってました」
「あ‥あのオッサンども!おまえもおまえもだ!スィーツで釣られて聞かれるまま喋ってないだろうな?」
「さぁ‥どうでしょう?クゥ‥その態度何なの?昨日の約束はもう失効したの?」今度は俺をジロッと睨んだ一美だった。
俺は一美の肩を抱き、部屋に入った。今日の一美はいつもより呑んでいた。顔も赤い‥俺もだが。
「久しぶりに呑んだな。一美‥大丈夫か?」
「うん‥呑んだね。何杯呑んだかな?」
「また話が楽しいと、酒も進むからな」クゥは私の横に座った。
「だよね!海外公務が終わって、少佐とTOP様と先輩達で呑みに行ったの楽しかった。ドジ話やドン引き話に最終的には‥ッププ」
一美は口を押えて笑った。
「最終的には、俺は説教ジジィだよ。悪かったな!おまえが悪いんだろうが!目を離すと、他国のエージェントをレベル以上に殴るわ蹴るわで」
「何でおまえはそんなに自制コントロールが効かないんだ?ってよくその大きな掌で頭叩いたよね?少佐」
「うん。ま‥元部下時代から俺は一美のこの頭が好きだった。小さくて俺の掌にスッポリ入るこの頭がな」そう言ってクゥは私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「私も好きだよ。この掌が‥」クゥの手の甲に軽いキスをした。
「ありがとうございます。ではお返しをさせてもらおう」
クゥの唇が私の唇をふさいだ。また私の耳元で、母国語でささやいた。私はクゥの頭を軽く抱きしめて、私もまたN国の母国語をクゥの耳元でささやいた。そして私はクゥの胸の中に抱きすくめられた。
冬休みに入ってから3日が過ぎた。私は朝からマンションで料理を作っていた。コタロウはもうキッチンから良い匂いがするので、私のそばに来てIHコンロの前で瞳をキラキラさせて、お座りしていた。
「はいはい‥君の分もありますよ。だからもうちょっと待ってね」
私は圧力鍋の蓋をしてタイマーセットした。そして冷蔵庫に貼ってあるカレンダーを見た。12月27日はハートマークで囲んでいる。その日は、クゥの37歳のバースディだった。私のバースディの時は、クゥが郊外のホテルでフレンチディナーでバースディを祝ってくれた。私はクゥにバースディ・パーティのリクエストを聞いたら、クゥは私の手料理とケーキを食べたいと言った。だから、私は今日は朝から料理をしてケーキを焼いているのだ。
また明日もボンバード家では、クゥのバースディ・パーティをする。ボンバードの父上がご帰国されたので、久しぶりに息子のバースディ・パーティを開催したいそうだ。クゥは「いいよ!もう37のオジさんだから」と照れて言ったが、育て親の執事さん・コック長に言われて、押し切られたそうだ。
「お父上は楽しみにしてらっしゃいますから、一美さんとパーティに来てくださいね」と‥
親はいくつになっても子供のバースディは祝いたいものなんだな。私も後からだが、父からバースディ・プレゼントをもらった。もちろん‥さともだ。私にはパールのブローチを‥さとには腕時計をプレゼントにくれた。プレゼントをくれた時は私とさとは驚いたが、その時の父の気持ちとボンバードの父上の気持ちが同じだと私は思った。
エプロンの中のスマホが点滅した。私の横に居るコタロウは後ろ足で立ち、前足で私のエプロンを叩いた。
「はいはい!クゥパパだね。モノレールの駅までお迎えに行こうか」
コタロウは尻尾をビュンビュン振って嬉しそうだった。
俺は今日は防衛大の研究室の打ち上げに顔を出していた。教授のご自宅で研究員とスタッフが招待された。教授のご自宅を出た後に呑みに誘われたが、丁重にお断りしモノレールの駅に向かった。
俺の左手には教授夫人から頂いた紙袋があった。教授夫人は俺が3月に結婚する事をご存じで、今日のパーティに少し早いが結婚祝いだとプレゼントを下さった。恐縮したが、プレゼントを頂いた。一美‥喜ぶだろうな。
クゥは用意したディナー料理を食べきってくれた。また横のコタロウも調子に乗って食べ、満腹でラグマットの上で爆睡していた。また‥クゥもジーパンのファスナーを下げてコタロウ同様に爆睡していた。
私はテーブルに座って、教授夫人から頂いたコーヒーカップのセットをまた箱から出して見ていた。またそのコーヒーカップがとても可愛かった。シンプルだがカップの中を覗くと、スワンのつがいが頭を寄せていた。またそのスワンが可愛いのだ。この頂いたカップは後年も大事に使わせて頂いた。
「さて、起こしてケーキ食べようっと」
私はカップを箱に戻し、まずはコタロウから起こした。キッチンでコーヒーをドリップしていると、コタロウが寝ているクゥを襲撃したようだ。クゥの驚いている声が聞こえた。
「こ‥コタロウ!やめろぉ‥ハラの上に乗るなってば」
コタロウはクゥが起きたのが嬉しいのか、テンションがアップした。
「イッデェ!!」クゥの痛がる声が聞こえた。コタロウはダッシュでキッチンに駆け込んできて、私の顔を見て「ワン」と鳴いた。
「ごくろうさんでした。ご褒美です」
エプロンの中からクッキー1枚をコタロウの口に入れた。
また今度はリビングからクゥの怒る声が聞こえたが、無視してコーヒーのドリップを続けた。
「さっきまで怒ってたのに、目の前のクゥパパはご機嫌だね。コタロウ」
コタロウは私の膝の上に前足を乗せて、同意の意味をこめて?私の鼻を舐めた。クゥは私が焼いたバースディケーキの2カット目を堪能している。
「あぁ‥うまかった。一美のケーキはホント美味いよ。甘くないスポンジにホイップクリームが少しだけ甘くてさ。また来年も焼いて下さい。ごちそうさまでした」と手を合わせ頭を下げた。
クゥは私とさとが、食事が終わったら手を合わせて「ごちそうさまでした」と頭を下げるのを見ていて、食事が終わる度にするようになった。
「イエイエ‥喜んで頂けて嬉しいです。はい‥これは一美からのプレゼントです。使ってください」私はクゥに大きい紙袋を手渡した。