HAPPY BLUE SKY 婚約時代 7
翌日から冬休みが始まった。この冬休みの間に、結婚式準備・パーティ準備・新居準備デキるところまで進行させておかなければ。また私は翌年3月から2週間の日程で日本に帰国する事になった。覚えているだろうか?うちの父・裕次郎さんがクゥに言ったこと。結婚式の前に日本に帰国させてほしいと言った事だ。結婚するにあたって亡き母の墓前に報告することと、立野の家から嫁に出したいと父の裕次郎さんは言いだした。
式の前に2週間も日本に帰国するなんて、冗談じゃないと思ったが。クゥとボンバードの父上の言葉に私はうなづくしかなかった。言われた言葉はこうだ。ボンバードの父上とクゥは私にこう言った。
「亡き母上にご報告しなさい。それは娘としてしなければいけない事だよ。私も親だからね‥立野のお父上の気持ちは良くわかるんだ」
「4年間‥俺の元で何を学んだ?頑なに全部拒否はしないこと‥頑な態度は事を悪くもするし、自分の視界も狭めてしまう。相手を受け入れる事によってわかる気持ちもあるんだ。な‥一美!日本に帰れ。日本でやり残したこともあるんだろう?一美がいない2週間は俺が頑張るからさ。帰りなさい」
「返事はどうした?一美」クゥの声が少し低くなった。
「わかりました。日本に帰ります」言葉を発した私だ。
私が言葉を発して、横に座っている父の裕次郎さんはクゥとボンバードの父上に深々と頭を下げていた。私はこんな父・裕次郎さんを見たことがなかった。いつも頭を下げられている人だったから。それから少しずつ、裕次郎さんの見方も変わったのは事実だ。
私はマンションに帰り、コタロウを部屋に入れた。そしてグレーのアタッシュケースを手にして玄関を出た。マンションの下では、クゥが車の中で待っていた。
「はい!これプラン表だ。プラン表見ながら行けそうなところは回ろう」
クゥがパソコンで作成したプラン表を受け取った私だ。
「うわぁ‥すごい。いつ作成したの?コレ」
「12月入ってからさ。冬休みが確定した時点で思いつく限り入力してみた。一美もチェックしてくれよ!」
「はぁい!では出発進行」クゥはゆっくりアクセルを踏んだ。
1−8
俺はフィッテイングルームの前のソファに座っていた。今、フィッテイングルームでは一美がウエディングドレスの試着をしていた。親達とホテル周りをした時に、ホテル内のブライダルセンターでウエディングドレスやカラードレスを見たのだが、一美的にはもう一つだったようだ。デザインもそうだが、サイズ的に少し問題があった。一美はモンスターレベルのパワーの持ち主だが、意外と体は華奢だった。軍の制服も既成サイズでは大きく、自分でリフォームして着用していたぐらいだ。フィッテイングルームから声が聞こえた。
「クラウス!ちょっと来て」声を張り上げているのは、俺の大学時代の同じゼミの友達だ。アイツがブライダル関係に進んだ時は、同じゼミのヤツは驚いたもんだ。職業の選択間違ったんじゃないかと言ったぐらいだ。
「はいはい!なんだ?リーさん」
リーさんこと、リン・マイヤーはフィッテイングルームのカーテンから顔を出して俺に言った。
「デザイン的には今着ているドレスがいいんだって。でもね‥ちょっとサイズが大きいみたい。フィアンセ殿も見てくれる?」
俺はカーテンの中に顔を入れて、一美が着ているウエディングドレスを見た。リーさんが俺を呼んだのもわかるような気がする。
「大きいな。リーさん!このサイズが一番小さいのか?」
「うん。あぁ‥ちょっと待って」
リーさんは自分の腕時計を見て、横にあった自分のスマホを掴んだ。
フィッテイングルームから一美の歓喜の声が聞こえた。
「こんなデザインあるんですね!それにジャストサイズです。これとこれがいいなと思うんですが、リーさんどっちがいいですか?」
「どっちもよく似合ってるよ。私に聞くよりフィアンセ殿に聞いたら?フィアンセ殿も見たいよね?」リーさんの笑い声がフロアーに響いた。
「ちょっと!まだ現実の世界に戻って来れないの?クラウスさん」
リーさんは俺の腕をバシバシ叩いた。
「‥ッテェな!もう戻って来てるよ!叩くなよ」
「よく言うよ。一美さんのドレス姿見てフリーズした人が。軽く1分はフリーズしてたわよ。後でアーノルドにラインしとくよ!ミラドにも」
「や‥やめろよ!おまえ、面白がってるな?」俺は手をワナらせた。
「うん。だって、どこをどう間違って熊みたいなクラウスに、一美さんみたいな超キュートな子が結婚するワケ?そこんとこ説明してもらいたいぐらいよ。一美さん‥超かわいいわ。熊のアンタにはもったいない!私のガールフレンドになってくれないかしら?ね‥モーションかけていい?私ならうーんと一美さんhappyにできるわ」リーさんは自信に満ちたスマイルをした。
「う‥うるせえ!誰が間違ってだ?おまえ‥大学時代から全然かわってないじゃないか!!人のファインセにモーションかけるって?いい根性してんじゃねぇか。リー!!いい加減にしろよ」
「うん。全然かわってないよぉ‥これが私のウリだもんね。あ、一美さんがでてきた。一美さん!私のガールフレンドにならない?クラウスより幸せにしてあげるわん。人生面白おかしくが一番よ」豪快に笑ったリーさんだった。
一美は一美で、俺に豪快な口を利く、このリーさんに感動したようで。
「す‥すっごぉい!初めて見ました。クゥにそんな口を利けるヒト見たの。ガールフレンドはダメだけど、お友達になりたい」笑いながら言った。
「でしょ!ガールフレンドなんてもったいない。リーさんのLover(恋人)になってよ。熊のクラウスはセカンドにしてさ。ね」
リーさんは一美のほおを軽く指で突っついた。ほおを突っつかれた一美は赤くなりながらも笑った。
また、リーさんもリーさんだ。ティールームに入った途端に姿を消し、通りすがりに私に「後はフィアンセの愛でご機嫌を戻しなさい」とドアを開けて出て行った。どーすんのよ?
すっかりフクれたクゥのご機嫌を戻すのには‥この手しかないか。私はスタッフからもらったモノを使う事にした。
リーさんがトレーにコーヒーと焼き菓子を乗せてティールームに戻って来て、クゥを見て私に言った。
「どんな魔法使ったの?見る限りご機嫌に見えるけど。あぁ‥キスしてご機嫌戻した?ねぇねぇ教えてよ。一美」
「それはまた今度で、やっとご機嫌が治ったからもう刺激しないでください。リーさん‥イエ‥リー姉様」ちょっとスマイルしながらリーさんに言った私だ。
「リー姉様?いやぁん‥アンタなんてかわいいのぉ。」
リーさんはトレーをテーブルに置き、私を軽く抱きしめて頬に軽いキスをした。その時だった‥クゥのドスの利いた声がフロアーに響いた。
「リー!!何やってんだぁ!!」と‥
リーさんの勤めるショップを後にして、私達は結婚式を挙げるチャペルに向かった。チャペルに向かう途中、私はクゥのご機嫌を治すのに一生懸命だった。ウエディングドレスのポラロイド写真を片手に持って、片手はクゥの右手を握ってこう言った。
「ね!教会の見学が終わったらスーパーでお買い物して、クゥの好きなディナー作るからね。デザートは一美ちゃん特製プリン作るし、後はマッサージするから、ご機嫌治して」
作品名:HAPPY BLUE SKY 婚約時代 7 作家名:楓 美風