HAPPY BLUE SKY 新部署が始動しました。
「仕事面は私達の想像外で活躍をしてくれました。仕事が終われば、美味しいコーヒーを飲ませてくれました。その1杯のコーヒーがとても美味しかった。仕事の疲れも飛びました。4年間‥細々と俺達28人の面倒を見てくれて、ゴミ部屋だった部室も綺麗にしてくれて、今じゃファイン支部内で1番綺麗な部室になりました。綺麗な部屋はいいですね‥身体も心も元気にさせてくれる。一美さんには部員全員感謝しております」
「私も諜報1班の前少佐・先輩方にはとても感謝しています。前少佐は仕事が終わったら、私をレディとして扱ってくれた。一番嬉しかったのは、訓練校の卒業お祝いに初めて連れて行って下さったディナー‥その時にワンピースと靴までプレゼントしてもらったの。私はそんなの1枚も持っていなかったから、すごく嬉しかった。そのワンピースは私の宝物です。靴も‥それからプレゼントしていた物も気持ちも」
クゥは私と同様に手をついた。
「一美さんとの結婚をお許しください。私のできる範囲で、一美さんを幸せにします。もう泣かせたり、哀しい思いはさせません。ここでお約束致します」
そしてクゥは父さんに深く頭を下げた。
父さんは予想通り烈火のごとく怒った。約5年近くも音信不通の娘にやっと再会できたものの‥話し合いが終わって娘から【結婚のご報告と許可】じゃ怒ると思う。でも、私達はいい機会だと思って。怒られるのをわかっていたが、ご報告させてもらったのだ。また‥クゥと私の結婚を後押ししてくれたのが、中村先生と理事長先生だった。親友2人にコンコンと言われ、父さんは私とクゥの結婚を許してくれた。
話し合いの翌日に父さんは日本に帰国した。また瑞穂ネェもK国に帰国した。今度はクリスマスに子供達を連れて私とさとに逢いに来ると約束をして別れた。話し合いの後は、私とさとは張りつめていた気が抜けたのか、揃いも揃って熱を出してしまった。クゥはため息をつきながら、私とさとの面倒をみてくれた。クゥが出勤している時にはクゥの育て親である執事さんとコック長がマンションまで来てくれて、クゥの仕事が終わるまで私とさとの看病をしてくれたのだ。その翌日から、クゥは支部から呼び出しがあり海外公務に入った。もう部下ではないから、公務の内容はわからない。ノートパソコンに2回ほどメールが着たが、いつ帰国するとは書かれていなかった。ま‥そうだろうね。あの業界は予定は未定だから。私も剣流会が始動したので、いつまでも寂しがっては入られない。自分にカツを入れて、仕事を頑張っている私だ。
クゥが海外公務に出てから10日間が過ぎた。発足式が行われてからすぐに営業のエキスパートが投入された。それから私達は毎日営業ノウハウを叩き込まれていた。またメイクやスーツの着こなしも、外部から招いた先生方に教わった。ファイン支部に入隊し、1年を過ぎた頃に受付嬢のアンとルーシーと仲良くなり、またその友達・経理課のスーザンとも仲良くなった私は、アン達に教えてもらいながらメイクや着こなしを覚えた。彼女達もメイクも上手で着こなしもオシャレだったが、やはり専門の先生は違った。この頃、それを実感している私だった。仕事を終えてマンションに帰ってからも、家でローションを使ってフェイシャルマッサージもし、シートパックをしている。日頃の手入れが美肌を保つポイントらしい。今日もそのスキンケアをしていると、コタが遊んで欲しいのかケージを前足で叩きだした。
「出したらコットンを食べるでしょう。終わってから!もう少しだから待ってて」
コタがそんな事がわかるはずがない。またケージを叩きだした。
「ダメ!」今度は短いコマンドでコタを怒った。コタはケージを前足で叩くのを止めた。これはクゥが躾けたのだ。クゥは実家で犬を飼っていた事があって、犬の躾には詳しかった。ボンバード家では7年前で2代目犬が居たそうだ。2代目が老衰で死んでからは、犬は飼わなくなったそうだが。
スキンケアが終わってから、コタをケージから出して膝の上にダッコしてやった。怒られた事はもう忘れたのか、コタは後ろ足で立って私の鼻をペロペロ舐めだした。
「こ‥こら!アンタが舐めたら、せっかくのケアが‥コタ!やめてぇ」
コタは私が喜んでいると思い、また私の顔を舐めだした。その時だった‥ノートパソコンから受信メールの音が鳴った。片手でマウスをクリックすると、専用フォルダーにメールが受信されていた。私は思わず声を挙げた。
「コタ!クゥパパだよ。クゥパパからメールだ」
コタはこれを聞いて、私の膝から飛び降りてテーブルの周りを嬉しそうに駆け回った。
翌日、剣流会のオフィスでは、私はとびっきりの笑顔で仕事をしていたらしい。自分では気がつかなかったが。
「またぁ‥エラクご機嫌だな。一美さんは」
「うん。どうやらコレがご帰還らしい。コレ」
中村先生は理事長先生に向かって【親指】を立てた。
「中村先生‥フィアンセでしょう。親指は彼氏だ」
「あ‥そうか。一美さんに怒られるな!またしかし、超ご機嫌だな」
「早々に帰って来るんじゃないのか?あの喜びようなら」
中村先生と理事長先生が言うように、私は昨日の夜から超がつくぐらいご機嫌だった。そのワケは、先生達の見解通りだ。そう‥クゥのメールには帰国日が書かれていた。またクゥは帰国日に【確定】と入れてくれた。これはもう公務が完全に終わったって事だ。もう間違いない!諜報業界は事が片付けば後処理は早いものだ。時差の関係で明後日の夕方に軍用機を使わずに民間の飛行機に乗って帰国する。私はその時はあまり深く考えずにクゥの帰国を喜んでいたが、後日‥クゥから事の次第を聞かされて驚くのである。
クゥが帰って来る前日は忙しかった。クゥが海外公務に出てからは、ウィークリーマンションの部屋は閉め切った状態だ。私はボンバード家に行って、育て親の執事さんからウィークリーマンションのキーを貸してもらった。もちろんクゥの許可済みだ。私が住んでいるのは、剣流会の借り上げマンションだ‥フィアンセと言えども、大っぴらに私のマンションに泊まる事はできない。仕事を終えた私は、一度マンションに帰りコタのお世話をしてから、クゥのマンションへ向かった。今から、部屋の窓を開けて空気を入れ替えて、掃除機をかけて、キッチンで明日の料理の煮込みをして‥私の頭はフル回転していた。
俺はビジネスシートのリクライニングを、後ろを見ながら倒した。幸い、後ろのシートには誰もいない。シートを倒して足を伸ばした。
「あぁ‥足が痛てぇ。腰も痛てぇ‥頭も痛いぞ。ったく‥今度の公務はMIXかよ。俺的には8日目の時点で帰国できると思ってたのにな。後ろから呼び止められたのがマズかったかな。でも‥結果的にはハッピーな事か?一美に話したら驚くだろうな。でもこのチャンスは逃したくない。俺にとってもスキルアップになるしな」
作品名:HAPPY BLUE SKY 新部署が始動しました。 作家名:楓 美風