小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

HAPPY BLUE SKY 新部署が始動しました。

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
【新部署始動しました】


ファイン支部の玄関を出た所で私は空を見上げた。先程まで雨が降っていたのだ。
その雨が降り止み、雲の合間からは綺麗な青空が広がりつつあった。
「あぁ‥青空が見えた!幸先ラッキーかな?今日も頑張るか」
正門の自衛官に外出を届けで、正門が解除されるのを待つ。
「行ってらっしゃい!カッジュ下士官殿!イエ‥剣流会の一美さん」
「はい!今日も頑張って営業に行ってきます。行ってまいります」
軽く敬礼をして、私は正門を出た。

5Fの窓からは、ディック主査とヨル先輩が私が正門を出て行くのを見ていたらしい。
「ッハッハ‥今日も一段と元気で」
「あっかるい笑顔で、剣流会の制服に着て!今‥海外出張中のフィアンセ殿に見せてあげたいな。営業になってから、一美さんはメイクも変わって麗しくなったのに」
「ですね!話し合いの翌々日からD国に海外公務になっちゃって、残念がってましたよ。剣流会の発足式に出席したかったのに。だから、俺はクゥ中佐にプレゼントしました。弟・さと君に頼んで発足式のDVDをダビングしてもらって。俺ってイイ部下でしょう」
「うん!イイ部下だね。クゥ中佐が帰って来たら頭なでてくれるかもよ?」
「頭なでるだけ?大の男が頭だけなでられても!一美さんなら尻尾振って喜ぶけどな」
そのヨル先輩の声に、部室にいた先輩達は笑ったのは言うまでもない。
そう‥クゥは話し合いの翌々日からD国に海外公務になった。期間は2週間程らしいが、諜報業界ではそんなのアテにならない。早く公務が終わる事もあるが、長引く事もあるのだ。元部下の私はクゥの帰りを気長に待つことに決めた。

私はまだギコちない笑顔で得意先回りをしていた。まだ発足したての剣流会はこれから、この土地で土台作りをしないといけない。NATOC隊員・訓練生のみカリキュラムだけではなく、日本の武道をもっと知って欲しくて、一般からも武道教室の生徒を募集したのだ。また中村先生が採用したスタッフの中には、日本の芸術文化のスペシャリストもいる。華道・茶道や書道などのスクールが同時に設立された。そうなると、地元の花屋さんやパーツを取り扱っているショップとも懇意にならなければいけない。まだ、営業スタッフ・ひよこの立野一美ですが、一生懸命頑張っています。

ファイン支部に戻る時、後ろから名前を呼ばれた。どっかで聞いた声だと思ったら、クゥのマブダチのミラド先生だった。どうやら、ミラド先生も外出の帰りらしい。珍しく、私にカフェラテを飲ませてくれると言い、表通りのカフェスタンドに入った。
「クゥはまだ帰って来てないのか?」
「はい。期間限定って言ってましたけど、どうなる事やら。元部下は気長に待つことにしました。コタ(コタロウ)にも言い利かせました。あ‥ブリオッシュのパンが食べたいなぁ。ミラド先生いいですか?」
私はケースに並んでいるブリオッシュのパンを指差して、営業スマイルをした。

「ったくぅ!おまえは営業スマイルすればイケると思ってるのか?」
私の頭を持っていた雑誌で軽く叩いた。
「全部とは思いませんけどね‥あぁ!そこでツッコミなしですよ」
「っちっくしょぉ!聞いてやろうと思ったのに」
ミラド先生は私に事前に阻止されたので、悔しそうだった。

帰り際に私の頭をなでてくれ、こう言った。
「よかったな!親父さんがクゥとの結婚を許可してくれて、またさとも医者を続ける事も許可くれてさ。一美さんもさとも頑張れよ。俺も応援するから!マブダチのクゥちゃんに婚約期間を楽しませてやってくれ。片手以上‥オンナッ気なかったから」
「はい。私も楽しませてもらいます。ミラド先生がジェラシーするほどにね」
「はいはい!じゃぁな」
ミラド先生はお隣の陸軍病院に帰って行った。私もファイン支部の正面玄関に向かって歩き出した。

話を少し遡ろう。

私は話し合いの場でクゥを父さんに紹介した。元上官であるけど、現在は違うと最初に前置きして話をした。話の内容とは4年前に訓練校から研修に出された時から話をした。また、クラウス・デ・ウィル・ボンバード前少佐は自分にとって、どれだけ心強い存在だったか、またクゥ前少佐・TOP様・先輩達・ミラド先生という温かい人達に囲まれ、自分を変える事ができた。日本に居る時よりも一生懸命頑張った事を父さんに言った。
「日本に居る時はとても息苦しかった。何をしても批判的な事しか言われなかった。試合に勝っても負けてもね。私が何か言うと、すぐに【親の七光りだから、言いたいこと言えるよね】ってロクに話も聞いてくれなかったわ。それが悔しくて哀しくて、私の心が限界に達してしまったの。それで日本を飛び出したの‥大会目前に出場キャンセルしたのは、申し訳ないと思っています。すみませんでした」
私は父さんの目の前で、手をついて謝った。

「でも‥それは間違ってなかったと思っています。日本を飛び出さなければ、今‥私はこの場に居ません。あのまま日本にいたら、いずれ命を絶っていたでしょう。クゥ前少佐に出逢うまで、自分を認めてもらえない、誰も私の事をわかってくれない。ずっとそう思っていたの。クゥ前少佐の元で4年間居てその考えは変わったの。ううん‥それは自分が悪いんだって。何事にも否定的で、自分からマイナスのオーラーを出しているんだって、クゥ前少佐とTOP様に教えてもらったの。言われた時、目から鱗が落ちた気分だったわ。私に面と向かって、そんな事を言ってくれたのは前少佐達だけだった。私‥それからすごく頑張ったの。だから‥今の私がいるの!それはわかっていただけますか?」

父さんは腕組みをしたまま、私から目を逸らさなかった。また私も父さんの目から目を逸らさなかった。こんな事をしたのは生まれて初めてだ。以前は怖くて父さんの目も見れなかったのに。
「以前は私が睨んだだけで、おまえは目を逸らしすぐに下を向いたな。どうやら、その元上官の下で働いた事は無駄ではなかったのだな。このN国に来て、おまえには得た物がそれだけ大きかったのか?」
「とても大きかったと思います。ファイン支部・諜報1班で過ごした4年間は、生涯で一番大きな物を得たと思っています。それは私の中では変わる事はありません。父さん‥お願いがあります」
私はまた手をついて頭を下げた。

「私は今‥交際している方がいます。その方が横に座っている‥Mr.クラウス・デ・ウィル・ボンバードです。クゥに出逢わなければ、今の私は居ません。もう‥お互いに結婚の約束もしています。どうか‥クゥと結婚する事を許してください」
中村先生は俺にうなづいた。
「ご挨拶が後になり申し訳ございません。クラウス・デ・ウィル・ボンバードです。本来なら、男の私が先にご挨拶をするべきですが。一美さんが過ごした4年間は、私にとっても貴重な4年間でありました。最初は‥」

クゥは私がいた4年間を、上官として父さんに話をしてくれた。