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HAPPY BLUE SKY カッジュ新部署へ 1

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「わかりました。クラウス・デ・ウィル・ボンバード中佐殿」
カッジュは笑って‥俺に軽く敬礼をした。

数日後、話し合いの場が持たれた。中村先生がモノレールの改札口で、カッジュの親父さんである、立野裕次郎氏を見かけたそうだ。親友の顔を見間違えるはずがない‥親父さんは逃げなかったそうだ。親父さんはそのまま、中村先生の自宅に連れて行かれた。カッジュとさとに逢わせる前に、親父さんにクギを刺さなければいけない事があったから。また、俺の方にも理事長先生から連絡があった。

「今‥中村先生が親父さんに話をしている。あの強情者の事だから、素直に利くとは思えないがね。この機会を逃したら、あの立野親子は不仲のままだ。そうだろう?クゥ中佐」
「はい。第3者が中に入れば情勢は違ってきます。また‥カッジュもさとも日本に居る時の2人じゃない。大丈夫ですよ‥親父さんが手を挙げそうになったら、俺がガッツリ受けて立ちますよ。今度はね」
「うん。頑張ってフィアンセと弟を守ってくれ。クゥ中佐」
「はい‥了解しました」

アーノルド少佐が俺の顔を見た。ヤツもカッジュと親父さんの事は知っていた。
「上手く話し合いが進むといいですね。カッジュには幸せになって欲しいですから。親父さんとの溝を埋めて、親父さんにも祝福してもらう方がいいですよ」
「うん。俺もそう思う‥そう思うからこそ、カッジュに言い利かせたんだ。4年前のカッジュとは違うよ。素直に俺の言う事も利く、また物事を前向きに考える事ができるようになったじゃないか。大丈夫さ」
「そうですね。クゥ中佐が躾けたカッジュですから」
俺とアーノルド少佐は顔を見合わせて笑った。

カッジュとさとを中村先生の自宅に行く前に、中佐室に呼んだ。あれから、カッジュもさとも2人で話をしたようだ。2人なりに作戦を練ったのかもしれない。俺も数点‥カッジュとさとにアドバイスをした。そのアドバイスを2人は素直に受け入れてくれた。また‥中佐室を出た時に、アーノルド少佐・TOP3名は交互にカッジュとさとの頭を腕で軽く抱きしめていた。
「ヤバくなったら、俺達を呼べ。カッジュとさとの応援に駆けつけるから」
「カッジュとさとの楯になってやるよ。モンスター親父のな!」
「俺らのかわいい妹分をみすみす殴らせるものか。弟分もな!」
「そうさ‥みんなカッジュとさとの味方だぜ。ここの部室全員な!あぁ大佐達も」
カッジュとさとはその言葉に目を潤ませていた。

アーノルド少佐がカッジュの頭を軽く叩いた。
「頑張れ‥君ならできるさ。ここでの4年間思い出せよ‥その4年間で培ったモノを親父さんとの話し合いに有効に生かすんだ。な‥カッジュ」
「は‥い。アーノルド少佐・TOP様」
カッジュは目を押えながら返事をした。またさとも同じように返事をした。

「止めてください!」
クゥの声が中村先生宅のリビングに響いた。中村先生と理事長先生と約束をしたのにもかかわらず、うちの父親は私達がリビングに入って来たと同時に立ち上がり、手を振り上げた。クゥは予測をしていたのか、私の前に立ちはだかり父親の右手を自分の腕で制止した。

「き‥君は誰だ!部外者は余計な口出しをせんでくれ!これは私達親子の問題だ」
「そうは行きません!あなたはすぐに手を出して、力で2人を抑え込もうとする。だから2人はあなたの前では萎縮するんです。今日は話し合いをするんでしょう?暴力では何も解決しません!あなたが何度手を挙げようと、俺はそれを完全阻止しますよ」
うちの親は、もう片方の手をワナらせていた。その手がまた振り上げられた時に、クゥの左手で制止した。
「俺は言いましたよね?何度でもあなたの手を阻止するって。一美(カッジュ)とさとをもうあなたには1発も殴らせない。殴るだけが躾じゃありませんよ‥ミスター・立野」

後ろから中村先生と理事長先生の声が聞こえた。
「エエ加減にせんか!立野」
「私達との約束を破るのか?立野」
その声にうちの親は挙げている手を下げた。それを見てクゥは、父親の目を真っ直ぐ見据えて言った。

「ご挨拶もせず失礼を致しました。俺はクラウス・デ・ウィル・ボンバードと申します。一美さんの元上官です。部外者ですが、この話し合いの席に立ち合せて頂きます」
「何故だ!中村ッ‥どういう事だ。藤村(理事長先生)説明しろ」
2人はうちの親の両腕を持って言った。
「ま‥とにかく座れ。茶でも飲め」
「一美ぃ!このカミナリ親父に玄米茶の美味しいの入れてやれ。さとぉ!もうすぐ車が着くから、お出迎えしてやってくれ」
私達は言われるままにリビングから出て行った。

中村先生は日本から持って来たのだろうか?玄米茶の入った茶筒が食器棚の中に置いてあった。茶筒を開けると玄米茶のいい香りがした。私はその香りを鼻で吸った。
「‥‥いい香りね」
「ほぉ‥日本のお茶はこんな香りがするのか?」
横を向いたらクゥが立っていた。

私は急須に湯を入れて蓋をした。そして、横にいたクゥの右腕を軽く握った。
「ありがとう。私達を守ってくれて‥すごく嬉しかった。日本では誰もそんな事をしてくれなかった。父さんが怖くて‥殴られても誰もかばってくれなかった」
クゥの大きい手は、私の頭を軽くなでてくれた。
「うん。俺は親父さんの存在を知ってから、君とさとを守るって心に決めたんだ。俺がパーフェクトに親父さんの手を阻止してやるから、安心して話をしろ。さとにも言っとけ」
「うん。ありがとう‥クゥ」
カッジュは軽く目を指で押さえた。また後ろで鼻をすすり上げる音も聞こえた。さとだ‥一度キッチンに戻って来たらしい。
「立野ふたごは揃いも揃って泣き虫だよ。さとぉ‥ちゃんと鼻かんでお出迎えしろよ。25歳の男が恥ずかしいぜ」
そう言って、クゥはそばにあったティッシュペーパーの箱をさとに投げた。
さとは受け取ってティッシュで鼻をかんだ。
「ありがとう!クゥ兄貴」そしてキッチンから出て行った。