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HAPPY BLUE SKY 退出まで2週間 3

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俺はコタロウを膝から下して、カッジュの腕を引っ張った。そして俺の膝の上に座らせた。
「どうしたの?今日‥支部でランチ食ってから少し顔色悪いよ。体調悪いのか?」
カッジュは首を振った。また‥言葉を探しているようだ。俺はカッジュの手を頭をなでてやった。
「言ったら俺が怒る事か?それは聞いてみないとわからないぞ。話してみろよ」
カッジュは俺の胸に顔をつけた。そして‥つぶやくように言った。親父さんから電話がかかってきて、名前を言われた瞬間に電話を切ってしまった事をカッジュは俺に話した。

「それは条件反射だな。仕方ない事だよ‥電話を切った事で俺に怒られると思ったんだ」
「‥‥ごめんなさい。クゥ」
「うん。まぁそれはいい‥4年振りに聞いた親父さんの声に娘は驚いちゃったんだよ。でもな‥カッジュ今度は切るなよ。話したくなかったら、俺に電話を回せ‥あ!ごめん‥言うの忘れてたよ。俺は親父さんのかかってきた電話に出たんだ」
カッジュは驚いた顔をした。

「ごめん‥言おうと思っていて忘れた。俺が間に立つから‥話し合いの場を持ちなさい。さとも‥もちろん同席だ。これは、彼氏のクゥからの命令だよ」
「うん、今度は逃げないで話すよ。怖いけど‥」
「頑張れ‥親父さんが殴りそうになったら、彼女様のボディガードもしてやる。親父さんには、話し合いの前に俺がしっかりクギ刺してやるよ。さとの分も」
「‥‥ありがとう。クゥ」

退室まで後1日となった。明日はご挨拶のみで退室する事になっている。私はロッカールームで、私物整理をしていた。また私物整理をしながら、想い出に浸っていた。私の手の中にあるベアー・ルーの小さなぬいぐるみは、少佐と初めてディナーを食べに行った時に、キャッシャーで少佐が私に買ってくれた物だ。N国では、このベアー・ルーは女の子が大好きなキャラクターだった。私も初めて、このベアー・ルーを見た時に、可愛さに一発陥落されてしまった。それ以来、ベアー・ルーのアイテムグッズを見つけては買ってコレクションしていた。レストランのキャッシャーで見た、ベアー・ルーは私が探していた7番だった。ショップを何軒も回ってもなかったベアー・ルーだった。見つけた時は、思わず手に取ってしまった。少佐が‥

「欲しいのか?」
「はい。この7番だけどーしても手に入らなくって」
私はバックの中から、財布を取りだそうとした。
「‥‥買ってやるよ。今日の記念にな!」
少佐はスタッフにベアー・ルーをラッピングを頼んだ。それ以来、この7番のベアー・ルーは私はいつも持ち歩いてる。私は部室に居る時は泣かないと決めていた。でもここはロッカールームで、今は私1人だ。私の涙がベアー・ルーを濡らした‥

「同じ支部内だって‥何度も自分に言い利かせてるのに私はダメだね。でも、明日でここの部員じゃなくなるんだ。それがすごく寂しいの。ここは私のオアシスだったから。少佐やTOP様に怒られたり、褒められたりしたもの。また頑張れば頑張るほど、少佐に褒められて、あの大きな手で頭をなでてもらうのが、私は1番好きだったから」
私は堪えきれない涙を止めるために、ベアー・ルーに顔を押し付けた。

ロッカールームの外では、ツィンダーが指で目を押えていた。また横に居たヨルも‥コイツらも寂しいんだ。カッジュとは仲が良かったからな‥小競り合いをし、よくカッジュに2人はシメられていた。そんな3人をよく俺とTOPは怒ったものだ。
「ってめぇらは!ガキか!いい加減にしろ」と‥
ツィンダーとヨルは、ハインツに肩を抱かれてロッカールームから離れた。ハインツは少佐形式で、二人に表通りのドーナツを食べさせて浮上させた。

この3人が部室に戻って来た。カッジュは剣流会フロアーに行って、在席していなかった。ハインツが中佐室に入って来て、俺に言った。
「まだ‥この界隈にいるかな?」
「今から8分前ですからね。カッジュの事を聞いてる東洋人がいるって!カッジュと仲の良い通信部のミックが俺に言ったんです」

カッジュのダチ・通信部のミックが東洋人の男性に尋ねられたそうだ。カッジュが支部内でどんな風に過ごしているのか、よく行くショップはどこか‥そんな事をミックは聞かれたが、今は個人情報時代だ。ミックは「よく知らない」と言って立ち去ったそうだ。
「スポーツ新聞社の記者だって言ってましたけどね。ナリがそんなカッコじゃなかったって言ってました。初老で60歳前後で、口調は穏やかだったそうですが、目つきが怖かったそうです」
‥‥間違いない。カッジュの父親だ。俺は携帯電話を手に取り、中村先生にメールをした。

私は部室でクゥ中佐を待っていた。クゥ中佐は今、支部の連絡会議に出ている。
「会議が終わったら、今日は外でディナーを食べよう。」と‥
クゥ中佐は勤務中なのに、私の携帯にメールをしてきたのだ。ディナーのお誘いは嬉しいけど、またクゥ中佐からメールが着た。
「コタロウはキャリーに入れて行こう、さとも誘って」
「さとも?」驚いた私だった。

私とさとは、車から下りて立ち尽くしてしまった。クゥ中佐がサイドボードのリモコンに手を触れると、目の前の門が左右に開いて行った。また門を入ってから、かれこれ5分以上走ってるのだ。
「く‥クゥ!一体どこへ行くの?」
「外でディナーじゃなかったの?クゥ兄貴」
(さとは、クゥの事をもう‥兄貴と呼んでいた。懐いたな‥コイツ)

ハンドルを握りながら、クゥは言った。
「あぁ‥俺の家だよ。支部の近くに借りてるのはウィークリーマンションだ。仕事柄、支部に寝泊りが多いからな。そんな事してちゃ不健康だ‥だからウィークリーマンションを借りてるんだ。時間のある時はこの家に帰って来ているさ。親父はいないが、俺の育て親がいるんだ。君達に逢わせてたくてね」
私とさとは顔を見合わせてしまった。コタロウだけが喜びの声を?上げていたが‥

カッジュとさとは、育て親のジィさんが作ったディナーを喜んで食べた。また、この2人はジィさんにすぐに懐いた。カッジュもさとも‥どうしてこんなに食い物に弱いんだ?また極めつけは、スィートの手土産にカッジュとさとは大喜びだ。
「コック長様‥すごく美味しいです」
「メッチャ美味いです。お代わりしてもいいですか?」
「私もいいですか?」
カッジュとさとのこの言葉に、うちのコック長ジィさんは喜んだ。また俺の育て親でもある、我が家の執事ジィさんにもこの二人はすぐに懐いた。これを機にカッジュとさとは俺の実家によく遊びに来るようになる。また‥コタロウも俺の実家に来るたびに、庭を駆け回るようになった。今はまだワクチン接種していないので、部屋の中だけだが。

俺がこの2人を実家に連れて来たのはワケがある。今、中村先生が手を尽くして、カッジュ達の親父さんを探している。探し出した後は、この2人と親父さんの話し合いをさせる。もちろん、俺と中村先生が立ち会いの元だ。また、親父さんはこの2人を見たら、口より手が動きまた2人を殴るかもしれない。それをさせないように、中村先生が先に話をする事になっている。50年以来の親友の事なら、言う事を利いてくれるかもしれない。

「カッジュ・さと‥話があるんだ。聞いてくれないか」