HAPPY BLUE SKY 退出まで2週間 3
4年ぶりの再会 2
俺の見間違いだろうか‥
カッジュの顔色が少し悪い様に見えた。ランチの時はアン達にプレゼントをもらってご機嫌だったのに。デスク横のツィンダーも気づいたようだ。
「カッジュぅ‥顔色悪いぜ。またハラでも痛いのか?」
カッジュは答えるまでに、一瞬の間があった。
「‥‥はいぃ。アン達のデザートまで食べたのが悪かったのかな?ちょっとトイレに行ってきますです。あぁ‥イタイ」カッジュは立ち上がってトイレに行った。
‥‥何だか変だな?
俺とアーノルド少佐はお互いの顔を見合わせた。
「食ってましたっけ?アン達の分も」
「いや‥アン達だって今日のデザートは大好物だよ。譲るもんか」
「ですよね‥」
本来、女は甘い物が好きだ。例え、マブダチであっても自分の好物を譲るもんか。
中佐になってから、俺は少佐時代よりも支部に居る事が多くなった。まだ中佐になったばかりと言う事もある。会議や研修やミーティングなどが多い。ここ3ヶ月ほどは国内にいる予定だ。またこの頃は支部も【勤怠調整】があり、残業などの時間が規制された。諜報1班・2班・3班も同様で勤務時間が変更になった。宿直3人を残して、申請のない者は定時17時に退庁し、申請を出して残業する者は、遅くとも21時までに退庁する事になった。また公休も変わった。少佐時代は休める時に公休を取ったが、改正後から週2回の公休を取る事を義務付けられた。また、有休・特別休暇を指定の日数まで消化していない者は、来年度の1月までに消化する事になった。
「中佐!チャイム鳴りましたよ。お帰り下さい」
中佐室のドアがノックされた。デスクワーカーのダンが17時の退庁チャイムが鳴ったら、ドアをノックする。またアーノルド少佐もTOP3人達も同様にされている。俺達は常習犯だからな。ダンは部長からどうやら指示されたようだ‥
「今日もカッジュんちへ行くんですか?」
アーノルド少佐・TOP3人は俺の顔を見て笑った。
「‥‥何でそんな事聞くんだ?」
「だって‥クゥ中佐が退庁したら、まずスィーツショップに足を運ぶって」
「ケーキの箱を手に持って、西通りに向かって歩く」
「‥‥その時のクゥ中佐の顔は緩んでいた」
「‥‥とジョン中佐が言ってました」
*(ジョン・ダフリン少佐も中佐に昇級しました)
そしてコイツらは、にこやかに手を振り‥
「彼女様によろしく。お泊りしちゃダメですよ!後2日なんだから」
「う‥うっせぇ!!往来で言うな!」
俺はガラにもなく、顔を赤らめて手をワナらせた。
支部から西通りに歩く事10分で、カッジュが住んでいるマンションがある。アイツらの言った通り、俺はスィーツショップでシフォンケーキを買い、カッジュのマンションへ向かった。今日はさとの荷物が届く‥カッジュは荷解きを手伝っている。荷解きが終わって、俺はさとの部屋の棚付や家電関係の接続を担当した。謝礼は‥さと君お手製ディナーで。
「美味い!このポテトコロッケ!またソースも美味いよ」
「でしょ!一美ちゃんの美味いけど、俺も中々でしょう」
さとは嬉しそうに笑った。俺はさとが作ったコロッケを5個も食べた‥それだけ、さとが作ったコロッケが美味かった。
さとが自分の部屋に帰って、俺はカッジュのパソコンを調整していた。膝にはコタロウが座っている。飼い主同様‥コタロウは俺の膝がお気に入りみたいだ。でも、その飼い主はちょっと元気がナイようだ。俺の横で座ってパソコンを見ているが、心は違う事を考えているようだ。
「そこの飼い主さん‥俺の説明頭に入ってるか?」
カッジュは俺の顔を見て、またまばたきをした。このまばたきをするって事は、言いたくない事か、また言おうかと躊躇している時のアクションだった。
作品名:HAPPY BLUE SKY 退出まで2週間 3 作家名:楓 美風