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HAPPY BLUE SKY 退出まで2週間 1

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膝の上に置いた、カッジュの手が震えだした。中村先生は俺の顔を見て目線でうなづいた。俺はカッジュの手を握ってやった。
「君には聞きたくない話かもしれんがね。君が3年前に帰国した時の事を私はヤツから聞いた。あの時は感情的に君を殴ってしまい、勘当を言い渡したがね」

中村先生が言う‥アイツと言うのは、カッジュの親父さんの事だ。カッジュの親父さんは、娘の近況を中村先生に尋ねたそうだ。中村先生もポリスを退職したカッジュの事を心配していたが、この時点ではカッジュの居所さえわからなかった。中村先生にカッジュの居所がわかったのは、カッジュが選手として復帰して公式試合に出るようになってからだ。中村先生もカッジュにコンタクトを取りたかったが、連絡がつかなかった。カッジュは試合が終わるとエージェントに戻る。エージェントだ‥仮に支部のスタッフに聞いても、カッジュの居所なんて知らないさ。

「私もね‥君に連絡が取りたかった。誰にも相談せずに県警を辞めて、どこの国に行ったのかもわからない。生きているのかもわからない‥どれだけ私が心配したかわかるかね?私でそれだ‥父親の裕次郎はもっとだよ!」
カッジュは顔を上げて、中村先生に言った。

「‥‥私より連盟や道場が大事な人が、私の心配なんてする訳がない!私はもう、立野裕次郎の娘じゃない!4年前に勘当され、二度と家の敷居をまたぐなって言われたんですよ。先生!父に伝えて下さい。私も4年前と気持ちは変わらない、また連絡を取るつもりもありませんから」カッジュは立ち上がって部屋を出て行った。

「クゥ中佐‥すまん」先生は俺に頭を下げた。
「大丈夫です。コタロウを引き取りに来たんだ‥帰ってきますよ。アイツは」
「‥‥君が言うなら大丈夫だな。君はどう思う?カッジュと父親の事は」
「俺が考えているより、あの親子の間にはもっと深い確執がありそうですね。アイツが正式隊員になる前に、日本に帰国しろと言ったのは俺です。仕事柄、心にわだかまりを持っていちゃ、正確な状況判断ができません。それはマズイですから。俺の提案を受け入れてくれて日本に帰国したのに、親父さんから受けた仕打ちはカッジュの心をまた‥深く傷つけましたね。でも‥親子なんだから。時間がかかってもいい‥カッジュと親父さんの心にできた氷を溶かしてやりたいと思います。いや‥カッジュも親父さんもお互いに歩み寄るべきですね。第3者が中に入って、親父さんにはカッジュに手を上げさせない事を約束してもらって」

「そうだな‥私もそう思うよ。時間がかかってもいい‥あの親子は話をさせるべきだな。その時は、カッジュの姉も弟も一緒にな!あの二人もカッジュと同じだから」
「そうですね。俺もカッジュに言い利かせます。俺もカッジュと親父さんには、普通の親子に戻って欲しいから」
「君は度量のある男だね。またそれで優しい‥カッジュが惚れるワケだ。意地っ張りでちょっとワガママな所があるがね、いい子だよ。一美ちゃんは!よろしく頼むな。彼氏のクゥさん」
「はい‥中村先生!俺も思いますよ。いい子ですよ‥一美ちゃんは」
俺と中村先生は笑った。