HAPPY BLUE SKY 退出まで2週間 1
カッジュは後2週間で、中佐達の元から旅立ちます
「はい‥そこで手首を返して」
私に聞きながら、ツィンダー先輩はデスクの上で、ワイシャツにアイロンを当てている。また横ではヨル先輩が私の書き込んだ【お掃除】の手順を新しいノートに書いている。
「カッジュぅ‥この洗剤ってどこに売ってるの?いつものお店かな?」
私はノートを覗き込んで見た。
「あ‥これは中通のドラッグストアーです。もうストックがなかったな。後で買いに行きます。先輩方!中通のドラッグストアーに行きますよ!要るものがあれば承りますよ!」
先輩達の買い物リストを持って私の元に来た。それから、私とデスクワーカーのダンさん(トムさんの後任)とドラッグストアーに向かった。
俺が部室に帰って来たのは、カッジュがドラックストアーに買い出しに行った後だった。
「エェ!行っちゃったのか!俺も欲しいのあったのに」
「あぁ‥電話下さいって言ってましたよ。間に合えば買ってきてくれますよ」
俺は携帯電話を耳につけながら、中佐室に入った。
「あ‥もしもし!カッジュぅ‥俺!シェービングムース買ってきてくれないか?後、かゆみ止めのクリームも!うん頼むな」
「俺の気のせいか?カッジュには一段と甘い声になったな。あのヤロー」
怒っているのはミラド先生だ。先週にR国から帰国したばかりだ。学会と研修会に行ってしばらくN国を不在にしていた。今日、R国のお土産を持って部に遊びに来ていた。私が出てすぐに来たらしい。
「まぁまぁ‥先生!もうすぐカッジュが帰ってきますから、久しぶりに【カッジュ・ブレンド】飲んだらいいじゃないですか!」
「そうそう‥許してやって下さい。あと2週間で異動で、中佐は寂しいんですよ。大した用もないのに、デスクにカッジュ呼びつけて顔の見納めしてるんですから」
「な‥何ぃ!クゥッのヤロー」手をワナらせて怒ったミラド先生だった。
「失礼ですが、どちら様ですか?立野は外出しておりますが、あぁちょっと!」
その声に、部員が振り返った。
「どうした?サム」アーノルド少佐がデスクから声をかけた。
「それが‥立野は長期公務から帰りましたか?今は支部に居るんですねって。俺が名前を聞こうとしたら、切りやがった」
「あぁ‥朝もあったぞ。カッジュが資材部に降りてすぐに!すまん‥言うの俺忘れてた。それも名前聞いても言わなかった」ディック主査が言った。
「何だ‥その変な電話は?」
中佐室から出てきた、俺の耳にその奇怪な電話の事が耳に入った。
「クゥ中佐!カッジュに言った方がいいんじゃないのか?2回だぞ!最近ヘンなの多いからな。用心させた方がいいぜ」ミラドが俺の顔を見て言った。
今日も俺はカッジュのマンションに来ていた。カッジュが買ったパソコンの接続に来ていた。接続のお礼はディナーで、パソコンの接続を引き受けた。また、仔犬がいたずらしない様に接続コードも専用カバーで覆った。
「これなら安心だね!ありがとう‥クゥ」
「うん。これで大丈夫だと思うよ。あ‥カッジュ!今日な‥」
俺はディック主査・サムが受けた電話の事を話した。
「エ‥誰だろう?心当たりないな‥」
「そうか。最近ヘンなの多いからな!気をつけろよ」
「はぁい‥わかりました」
カッジュには、注意するように言ったが。一体誰なんだ?
翌日、私はクゥと一緒にコタロウを引き取りに行ったのだが。そこである人物に出逢った。向こうも私を見て驚いていた。その人物とは‥
俺は理事長先生から、カッジュが4年前に日本を出国した時の様子を聞いていたので。
「ボンバード中佐!ご許可願いますかな?」
「どうぞ‥お気の済むまで、100歩譲ってもカッジュが悪いですので」
「く‥クゥ!!」俺を睨んだカッジュだった。
カッジュはまだお尻を押えている。カッジュのオシリを平手で思いっきり叩いた人物は、カッジュの親父さんの親友で、また道場の師範代でもあった。去年に警察官を定年退職し、理事長先生の誘いを受けて剣流会の館長となった。中村隆夫先生‥カッジュはこの中村先生の愛弟子だったと、理事長先生は俺に教えてくれた。
「イッタッタタ」
「イタイと思うよ。中村先生もモンスターパワーだし、ま!カッジュがした事はそれでも足りないかもな。あ‥カッジュ!残りはクゥ中佐に叩いてもらえば?」
「り‥理事長先生ッ!」
左手をワナらせるカッジュに、今度は俺がカッジュのオシリを平手で叩いてやった。最近ナメられてるかな!
「ホォ!お噂通りの方だ!うんうん‥クゥ中佐とお呼びしてもよろしいか?どうぞ‥これからもカッジュの躾をお願いしたいものですな。私と同盟を結びませんか?」
中村先生が俺の前に手を差し出した。俺も手を差し出して‥
「はい。喜んで同盟を結ばせて頂きます。よろしくお願いします。中村先生」
俺と中村先生は、カッジュの目の前で握手をして同盟を結んだ。もちろん‥理事長先生もそれに加わり、カッジュがフクれたのは言うまでもない。
だが、コタロウが犬舎から連れて来られて、カッジュの顔をコタロウが舐めた事によって、カッジュのご機嫌は一度になおった。また‥コイツは人懐っこい犬みたいで、俺の顔も中村先生の顔を舐めた。
「立野ぉ‥少し話がある。クゥ中佐も同席してもらえまいか?」
‥‥話って何?今度の剣流会の事かしら?クゥも同席だなんて‥
作品名:HAPPY BLUE SKY 退出まで2週間 1 作家名:楓 美風