HAPPY BLUE SKY カッジュの旅立ち編 1
俺とカッジュは、今からD島のリゾートに出発する。別荘暮らしを考えていたが、別荘はいつでも行ける。上層部から頂いた特別休暇だ!カッジュと言う彼女もいる‥楽しませてもらおうか。この特別休暇を。
プライベートビーチで、俺とカッジュは楽しんだ。また海で足を動かすことも、良いリハビリになる。俺は海中でカッジュの肩を掴んでゆっくり足を動かした。
「痛くないの?クゥ」
「うん!水の中だと重さも半分だからな。快調快調!今度はカッジュがやってみるか?」
「うん。でも‥クゥの事だ!途中で沈められそうだな!信用できない」
「バレたかぁ‥ッハッハ」
「やっぱり!考えていたんだ‥後でビーチに上がったらオシリ叩くからね」
「ごめん!ごめん!カッジュ」
「んもぉ!クゥったら‥」ビーチには俺とカッジュの笑い声が響いた。
またこのプライベート旅行で2ヶ月ぶりにカッジュを抱いた。大ヤマが終結する半月前から俺もカッジュもそういう気分にはなれなかった。当然と言えば当然だが‥
俺の腕の中でグッスリ眠っているカッジュは、この4ヶ月でエージェントとしてステップを上がった。カッジュは今年で4年目に突入する。エージェント界では、4年目は一つの区切りになる。この4年目でエージェントを続ける者もあれば、辞めていく者もいる。またこの時期に、上官と面談があり将来の方向を話し合う【面談】がある。カッジュにはまだこの4年目の区切りの事を俺は話してはいない。またTOPも俺が話を切り出すまで、黙っていると約束をしてくれた。また‥入院中に大佐が俺の見舞いに来た。大佐は俺に話があって個人的にC国に入国した。
「どうだろう?君としては手離すのは惜しいだろうが、24歳だ。まだまだこれからだよ。カッジュの気持ちももちろん‥重視するよ。考えてみてくれないか‥上官として」
また部長も中佐も同じ事を俺に言った。この二人は電話で話をしたが。さて、そろそろ切り出さないと、後3日でN国に帰国するからな。
カッジュがキッチンでランチを作っていた。俺はソファでテレビを見ながら、カッジュの様子を伺っていた。ご機嫌も悪くなし、体の調子も悪くなさそうだ。ランチを食べてから切り出すか。俺はリモコンでテレビの消した。
「カッジュの作るパスタはどれも美味しいよ。お代わりしていい?」
「いいよぉ。待っててね」
カッジュは俺の食べたプレートを持って、キッチンに入って行った。俺は自分のアタッシュケースからクリアーファイルを取り出した。
「俺が病室で言った事覚えているか?話があるって言った事だ」
「はい。覚えています‥何のお話ですか?」
カッジュはそういうヤツだ。俺の口ぶりで、部下のカッジュに戻った。
「カッジュは今年でエージェント何年目だ?」
「満3年で、来年の1月から4年目に入ります」
「うん。そうだな‥君には言った事がなかったが、エージェント界では4年目が一区切りなんだ。上官として4年目に入る時に、その部下にエージェントとしての継続の意思があるかどうか、将来的な事も話し合う面談をするんだ。本来なら、俺の他に大佐・中佐・部長が同席するんだけど、あの御三方は俺に一任した。俺の話を聞いてくれるか?」
私は少佐の口から出た言葉信じられなかった。動揺して、言葉が発せられない私を少佐は腕の中に抱き、また私に言い利かせた。
「俺だって君を部から出したくない。でもな、一生この仕事ができると思うか?人間だ‥体力・気力の限界がやがてやってくる。それも考えてくれ‥まだ君は24歳だ!もっと視野を広げろよ。訓練校の話も、理事長先生の話も君にとって決して悪い話じゃないから」
「い‥イヤです。し‥少佐の傍にいたい!ずっとずっと‥」
カッジュの瞳から見る見る内に涙が溢れた。俺はカッジュの頭を腕で抱きしめた。
「俺だって君を離したくない!傍に置いて一緒に仕事をしたいと思っていた」
俺の言葉に、カッジュは俺の顔を見た‥
「過去形だ‥今は違う。もう君を危ない目に遭わせたくない!俺のエゴだと思われても仕方ない。俺はもう君を部下としてはなく‥1人の女性として見てるから‥だから」
少佐の言葉が途中で途切れた。私の肩を掴む少佐の手が震えている‥こんな少佐を私は今まで見たことがない。
「し‥少佐‥どうしたんですか?」少佐は下を向いたまま首を振った。
「一度しか言わないから‥よく聞いてくれ」少佐の声に私はうなづいた。
作品名:HAPPY BLUE SKY カッジュの旅立ち編 1 作家名:楓 美風