HAPPY BLUE SKY 後編5
車はXXX州に入り、そこから30分程北上した。少佐はカーナビで目的地を確認して、ハンドルを左に切った所で、私に言った。
「もうすぐ到着する。降りる用意しておけよ!パーキングしてから少し歩くから」
「はい‥あのぉ!どこに行くかぐらい教えてもらえません?ドーリ」
「はいはい‥歩きながら話すよ」また、答えてもらえない私だった。
少佐が車のドアを開けてくれて、私の前に手を差し出した。
「どうぞ‥奥様!」
「ありがとう」私は手を握って車から降りた。
少佐はトランクにキャリーを積んでいたようだ。私の荷物と自分の荷物を積み、片手はキャリーを引き、もう片手は私の手とつないだ。
「今から行くところはうちの別荘だ。すっかり忘れてたよ!ガキの頃に遊びに来ただけでさ。その別荘に先週親父が滞在したんだ。それを思い出した‥あぁ!心配するな。親父はもう赴任国に帰国しているから」
「べ‥別荘ですか?」
私は驚いた顔をしていると、少佐はそれを楽しむかのように笑った。
「うん。あぁ‥あの大きな樹木の向こう側だ。もう着くぞ」
握っている私の手を、ブラブラさせて足並みを速めた少佐だった。
私は別荘の建物を見て驚いた。この人は資産家の息子なの?別荘の建物は、築年数は経っていたが、手入れされ季節の花達がガーデン・玄関を飾っていた。また管理人が居るようだ。玄関に段ボールに入った食材や日用品が入っていた。またメモも入っていて、少佐がそのメモを読み上げた。
「クラウス坊ちゃま!3日分の食材です。リネン類はお部屋にご用意しております。ご用の際はいつでもどうぞ。メリーシャトル」
「ぼ‥坊ちゃま?メリーシャトルさんってどなたですか?」
「管理人のバァさんだ。70歳過ぎてるけど、元気なバァさんだぜ!まだ言葉も頭もシッカリしてるから。俺はこのバァさんに口で負けるんだ‥この年になっても」
「し‥イエ‥ドーリーが?うっそぉ‥ックック」
私は堪え切れずに笑い出してしまった。また少佐もそんな私を見て一緒になって笑った。
作品名:HAPPY BLUE SKY 後編5 作家名:楓 美風