HAPPY BLUE SKY 後編3
私は少佐の胸の中に顔をつけたままだった。少佐がそうさせたのだ‥
「3年前‥君がボング教官と支部に挨拶に来る前に、俺は【女の訓練生なんか要らない・受け入れない】って悪態ついた。どうせ‥1日で辞めると思ってたからさ!でもな‥その訓練生は俺の想定外だった。キャシャなボディで180cmクラスの大男を、足蹴り1発で失神させるわ、スニーカーで男の横っ面張らせたら、歯は3本折るわ。俺は仰天したよ!その訓練生のパワーにね。俺はコイツは今までの訓練生とは違うって思った」
少佐は私の頭に手を乗せて、ポンポンと私の頭を軽く叩いた。
「俺の勘は当たったね。その訓練生が捕り物に参加するようになって、仕事がやり易くなったよ。その訓練生は隊員になってからも、モンスターパワーで他国のエージェントを捕獲してくれて、また凄んでくれてゲロまでさせてくれる。俺は嬉しかった‥検挙率も上がったしな!また、その隊員は捕り物が終わった後にすぐに【おなかが減った】とか【ノドが渇いた】とか言うんだ。それも無邪気な顔してさ‥隊員になってから2年間は、そんな無邪気な顔もかわいいと思ってた。でもな‥この1年で俺の気持ちに変化があったんだ。かわいい気持ちから‥ある気持ちに変わったんだ」
少佐は私の手を握りながら言った。
「上官が部下に好意を抱く(いだく)なんて許されない事だと思っていた。でも、気持ちは抑えきれなかった。22歳の時からの君を知っている俺だ。この2年間で君は俺の予想以上にエージェントとしては成長した。でも、仕事外は年頃の女性だもんな‥カッジュを見る度に綺麗になっていった。そんな君を見てたらさ。10歳年上の35歳のヤローは、家に帰ってから、書斎でため息ばかりついてた。24歳の年頃の女性だ。ステディが居るんだろうな‥10歳年上のオッサンなんか相手にしてくれないよなって、ボヤいてはため息ばかりついていたんだ。俺は君が好きなんだ‥訓練生の時から」
私は少佐の言葉が耳の中でこだました。少佐は私と同じ事を思っていたのだ。私も訓練生時代から少佐の事が好きだった。でも‥10歳年下の私なんて【ガキ】扱いで、相手にしてくれないと思っていた。また上官が好きだなんて‥許されない事だと思っていた。
「ほ‥本当に?」
「うん。こんなシーンで俺は嘘をつける男じゃないぞ。俺はその方面は不器用なんだ‥ミラドみたいに、軽く女口説くなんてできないんだ。任務一筋の仕事人間の俺が公務中にだぞ。信用しないのか?カッジュ」私は首を何回も左右に振った。
「‥‥ですよね。仕事人間のトーヘンボクの少佐が‥ックック」
私は思わず‥笑い出してしまった。また少佐もそんな私を見て笑った。
少佐の腕が私の背中を抱きしめた。
「だろう!君の気持ちも聞きたい。もし嫌なら、この手を払いのけてくれ」
「‥‥しない。そんなこと‥これが私の返事ですから」
私は自分の腕を少佐の背中に回して、少し力を入れて抱いた。
作品名:HAPPY BLUE SKY 後編3 作家名:楓 美風