HAPPY BLUE SKY 中編
少佐の出向【3】
少佐は朝礼が済むと、すぐに軍機でC国に入国した。部室を出る時に私の頭を軽く叩いて、
「俺が不在の間は、TOPの言う事利いていい子にしてろよ。じゃな」
すれ違いざまに‥こう言ったのだ。私はうなづく事もできなかった。もっと‥少佐と話がしたかったのに、少佐は早足で部室から出て行った。また、同行にツィンダー先輩が選ばれた。どうして、私じゃないの?私じゃ‥ダメなの?そんな事を思っていると、ますますメリこむ私だった。そんな私を見ていたアーノルド主任がデスクから声をかけた。
「カッジュ!俺はさっき何て言ったかな?聞いてなかったのか」
「申し訳ございません。気持ち切り替えます」私は頭を下げた。
私が昼休憩に入ってから、アーノルド主任・ツィッター主査でまた【会談】をしていた。ビリー副主任・ディック主査は少佐に同行している。
「やっぱりなぁ。キッチンで言い利かせたけど、相当なメリこみだよ」
「ショックだったんだな。いつも少佐と一緒だったから」
「少佐だって連れて行きたかったみたいだけど、カッジュは1月の終わりに世界選手権の予選会があるじゃないか。予選会を突破したら、アンタ!世界選手権だよ。中佐も部長もカッジュが予選会のメンバーに選ばれた時、すごく喜んでたろ」
「うん。少佐も喜んでた!ヘッドコーチさんから連絡受けた時、笑顔だったろう」
「だから、ツィンダーを同行させたんだよ。カッジュにもそれを言い聞かせたんだぜ。世界選手権も近いから!少佐が臨んでるのはカッジュが自分で納得できる結果を出すことだって。だから今回は同行は外したんだって。口では【はい】って言ったけどよ」
私はアーノルド主任にキッチンで言い利かされたのだ。少佐の出向同行者の名前が私の名前ではなく、ツィンダー先輩である事にもショックを受けてしまった。でもそれは、明確な理由があるから、カッジュはメリこまないようにと言われたが。私はやはり‥ショックだった。少佐はいつも長期公務の時は、ほぼ同行させてくれたのに。少佐と一緒だから、長期公務と耐えれた私だったのに。
また‥私がメリこんでいるのが少佐に報告が入ったみたいで、定期連絡の時に電話口で少佐に怒られた私だった。私は怒られたのに、電話を切ってから一度に気分が軽くなったのだ。少佐と話せたこと、少佐が私の事を気にかけてくれた事が嬉しかった。それから、私は少佐の期待に添えるように仕事も練習も頑張った。
長期公務に出て1ヶ月が経った。ツィンダーとTOP2名を(交代)でサポートに置いて、C国に在中している俺だ。某国のVIPエージェントがこのC国にいる情報を掴み、俺達の任務はVIPエージェントを捕獲し尋問する事だったが。中々尻尾を出さない‥またヤツは表向きは会社経営をし、代表取締役に就任していた。
聞き込みの成果がもう一つ現れない。また、ツィンダーではこなしきれない仕事もあった。ツィンダーを連れて来たのは、もう一つ理由があった。ツィンダーは今年の3月に昇格試験がある。その昇格試験を受験する前に、研修を受けなければいけない。ちょうど、C国でその研修があるので、同行させた。
俺はファイン支部からのメールを見ていた。定期連絡と個人連絡用に使っていた。電話は盗聴される可能性があったから使用していなかった。電話連絡はウィンキー支部からかけていた。
「おぉ!そうか‥うんうん!さすがカッジュだ」
「どうしたんですか?少佐」ディック主査が顔を上げた。
「カッジュが世界選手権の予選会で1位になった。代表選手に選ばれたそうだ」
「やったぁ!さすがカッジュだ。また忙しくなりそうですね。カッジュは‥」
「そうだな!また‥俺に【サブレが食べたい】とかメール送ってくるんだぜ。いい加減にしてくれよ!アイツの親父じぇねぇぞ。俺は」ボヤいた俺だった。
俺が部屋を出て行ってから、ディック主査とツィンダーは笑った。
「親父じゃねぇぞ‥って言ってる割には嬉しそうな顔をしちゃって」
「文句言いながらも、カッジュが甘えたら嬉しいんですよね。少佐」
「うん。あの人はそういう人さ」二人は顔を見合わせて笑った。
作品名:HAPPY BLUE SKY 中編 作家名:楓 美風