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CROSS 第4話 『嫌な任務』

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 山口は、部屋の外にいた秘書官を無視し、エレベーターに
乗り込んだ。秘書官は呼び止めることもなく、おじぎをした
だけだった。まあ、おそらく彼女の耳にも、先ほどの大声が
よく聞こえていただろう。
 黙ったままの山口を乗せたエレベーターはエントランスに
着き、山口は外へと直行した。その姿を、受付の女性はポカ
ンとした表情で見ていた。

 司令部を出た山口は、少ししてきた電車のような乗り物に
乗り込み、空いていた席に乱暴に座った。乗り物が動き始め
たとき、ズボンのポケットに入っていた山口の携帯通信端末
がアニソンの着メロを流し始めた。
 山口は、携帯通信端末を耳にあてた。まわりに少しいた他
の客がジロリとマナー違反の山口を見る。しかし、山口はそ
んなことにはかまわなかった。山口は立派な「ゆとり世代」
である。

「……誰だ?」
面倒くさそうに山口が言った。
「ワシじゃ、おまえの特務艦の修理や改装は、もう終わった
 ぞ! 出航しようと思えばいつでもできるぞ」
相手は、あのドッグの主任であった。おそらく、ドッグからか
けているのだろうが、主任の後ろでうるさい作業音は聞こえな
かったので終わったのだろう。
「……ああ、また仕事だ」
「なんだ、もう仕事が入ったのか……」
「嫌な任務をね……」
「なーに、退役までの長い軍人人生、いろいろあるさ」

 その後、しばらくしゃべった後、山口は通信をやめ、携帯
通信機器を元のポケットにしまった。
 ちょうど、基地の保養所に着いた。山口は、短い休暇を取
れると喜んでいる隊員たちの元へ、重い足取りで歩いていっ
た。