ゴースト・ワイフ
6
時計のアラームが耳元で鳴っている。僕は手を伸ばしてアラーム時計を見た。
「し‥翔太!沙希起きろ。早く」横で寝いてる子供たちを揺り起した。
子供達には、買い置きしていたバターロールと牛乳をテーブルに置いた。
「それ食べて、すぐ出れば学校間に合うよな?」
僕はネクタイを締めながら言った。子供達は口をモゴモゴさせながら‥うなづいた。
うちの子供達はまだ1年生だ。いつも妻の奈央が集合場所まで二人を送って行った。僕も送ってやりたかったが。翔太と沙希は玄関を出たところで僕に言った。
「もう二人で行けるよ。パパ」二人は手を振って歩き出した。
「ごめんな!翔太・沙希」手を振りながら僕も駅に向かって歩き出した。
私は智達が出て行ってから、ゆっくり床に降りた。さっきまでカーテンレールの上で腰を掛けて見ていた。昨日までは手助けをしたくて、聴こえない声を張り上げて。またすり抜けてしまう手を一生懸命動かしていたのだが、今日はあえて何もしなかった。昨日、大天使様のお使いの男が言った事を私なりに考えたから。
テーブルの上には、食べ残したロールパンに飲み残した牛乳の入ったグラスがそのままだった。智さん‥自分は何も食べずに出勤したのね。わからなくはないけど‥
私が生きている時は、朝食は目玉焼きやスクランブルエッグやソーセージにサラダをつけたのに。そしていつもドリップしたコーヒーもあったのに。
「慣れないとはいえ‥このままじゃよくないわよね。うん‥大天使様のお使い様」
私は胸の前で手を合わせ‥心の中で祈った。