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目覚めると…

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 また疲れ切った身体で家に帰った私は‥今度は玄関の中で座り足を投げ出してしまった。もう歩けないのだ‥1歩も。
そのまま横を向いて玄関マットの上に頭をゆっくり下した。少し休めば身体が動く‥ちょっとだけ休もう。そして目を閉じた私だった。

 夢を見ていた。でもリアルだった‥手を伸ばせば届きそうな距離に神戸に住んでいる母がいたのだ。
「おかぁちゃん‥何でそこにいてるん?」
私の問いかけに母は答えず‥笑顔でうんうん‥うなづいた。

 母の手が私の頭を優しくなぜてくれた。小さい頃‥この母の手が大好きだった私だ。なぜてもらっている内にまた涙が溢れてきたのだ。また母は指先で私の涙を軽く拭ってくれた。

「おかぁちゃん‥私が全部悪いん?私は私なりに一生懸命頑張ってるのに。誰もわかってくれへん‥そんなに私のコトが嫌いなん?直樹もXXXさんも」
夢の中で‥母に心の内を打ち明けてしまった私だ。

 気がつくと、私はベッドに入って眠っていた。夢の中でも泣いたのか目が赤く少し腫れていた。この顔じゃ出勤デキない。キッチンでタオルを冷やし目に当てた。
「私‥相当弱ってるんだな。夢の中でおかぁちゃんにグチってるなんて」
私は朝から深いため息をついてしまった。また私のこの深いため息には原因があった。

 短大を卒業して、最初に勤めたのは地元神戸の商事会社だった。従業員が30人程の小さな会社だった。事務の仕事をしていたがいつも補助的な仕事ばかりで嫌気がさしていた。1年勤めた後に、東京に上京した。その東京に上京する時に母と口論となった。母は神戸で生まれ育ち、また同じ環境の父と結婚し専業主婦になり私・妹を育てあげた。長女の私は「家を継ぐもの」と小さい頃からそう言い聞かされていた。小さい時はそんなものかと思っていたが、社会人になってからソレが堪らなくイヤになりきっかけがあれば家を出たかった。上京してから私は神戸に帰っていない。時々電話はするが‥

 クリニックに出勤してから、分刻みの仕事スケージュールをコナし。お昼も片手にサンドウィッチを持って片手はマウスを持って仕事をしていた。そうしないと仕事が片付かなかった。受付カウンターで私を呼んでいる声がした‥
「はぁい!今行きます」立ち上がった時だった。視界がグルグル回り‥私の意識はそこで遠のいた。
作品名:目覚めると… 作家名:楓 美風