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ダブルな顔

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<2>
 私はファイルの1Pを指でめくった。私の目に入ったのは「V’S リクエスト・リスト」と書かれた文字だった。何のリクエストだろう?私が今までに目にした事がないファイルだった。ファイルの2Pに指をかけた時だった。武田さんがカウンターに戻って来たのだが、ひどく慌ててる様子だった。いつも沈着冷静な武田さんにしては珍しい事だった。

「あぁ‥どーしよう」武田さんは両手で顔を覆ってその場にかがみこんでしまった。
「ど‥どうしたんですか?武田さん」
武田さんは両手で顔を覆ったまま‥つぶやいた。

 私は武田さんに手を引っ張られて、リフレッシュルームに入室したが… 
「た‥武田さん!どこに行くんですか?」
「いいから!来てちょうだい。あなたなら乗りきれるかも!お願い来て!」
武田さんは私の腕を引っ張って、リフレッシュルームの廊下を走って行った。

 私は辺りを見回した。こんな部屋に来たことがナイ…一体ここはどこ?
私の腕を引っ張って、廊下を駆けて来た武田さんは苦しそうに胸を押さえていた。
「え‥榎本さん‥あのね」話し出した武田さんだった。

「エェ!!っぐ」武田さんに口を押さえられた。
「大きい声出さないで‥ご本人にとってはとっても大事なコトなのよ。私もそれ相応のジャンルに対応してきたけれども。このジャンルは知らないのよ。お願い助けて!あぁ‥さっきファイルを見ていたでしょう!」
私は手で口を塞がれているので、コクコクと頭を上下した。武田さんはソレを見て慌てて口から手を離してくれた。

息を整えながら武田さんの話を聞いた私だった。
「エェ‥あのファイルって」
「うん。本来ならカウンターデスクにはあるべきではないのよ。たぶん‥」
「たぶん?何ですか」

武田さんは胸に手を当てながら‥言った。
「誰かが故意的に持ち出したかもしれないわ」
「故意的に?誰が持ち出したんですか」
「わからないわ‥あのファイルの中の情報が露見したら‥あぁ恐ろしい!榎本さん‥あのファイルにはね」

私は信じられなかった。武田さんの口から出た言葉があまりにも現実とかけ離れていて。
「そ‥そんな事ってあるんですか?スポーツクラブであり得ない!」言い切ってしまった私だった。
「信じられないかもしれないけど。ファイルに載っていたVIPは2面の顔を持っているの」
話し出した武田さんだった。

 私は武田さんに部屋の前で言われた。
「榎本さん…部屋の中で何を見ても驚かないでね。そして普通に接してあげて」
「は‥はい。努力します」私はドアのノブに手をかけた。
作品名:ダブルな顔 作家名:楓 美風