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ダブルな顔

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第2章  秘 密



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 チュープレス・スポーツクラブに勤務して1ヶ月が過ぎた。1ヶ月前に立野ゼネラルマネージャーから言われた事を心にとめながら私は頑張って働いた。ゼネラルマネージャー室で言われたコトはこうだった… 
「榎本さん‥誰だって苦手なエリアはあるの。でもね‥いつまでも逃げててはダメです。苦手なモノを克服しなさい。克服することによって、自分に自信が持てるから。それと返事はハキハキよ!暗い顔して仕事はしないこと!わかりましたね」

 私は今まで自分に甘えていたのだろう。周囲がツラく当たる分… 
「仕方ないでしょう。デキないんだから」
「元気に返事なんかデキない。したら‥また言われるもん」
言い分けばかりして逃げていたのだ。自分で何一つ解決しようとはせずに‥

 私が配属されたのは‥3F「リフレッシュルーム」の受付だった。ここは名前の通り「リフレッシュ」するところだ。運動で汗を流したメンバー達が、ここで電子キーを受け取って個室のリフレッシュルームに入る。リフレッシュルームの中には、ドリップしたコーヒーや紅茶・その他多種のドリンクが置いてあった。これらは全部セルフサービスになっていた。メンバーは飲みたいドリンクを持って個室に入室する。疲れた身体を癒すマッサージチェアーもある。音楽やDVDを楽しむ部屋もある。

 私の仕事は‥リフレッシュルームの予約管理と内線が鳴れば。個室ルームに伺いご用を承る。単調な仕事と思えた。また、メンバーは用があれば‥個室に設置している「パネル」を指で操作することになっている。私達はそのパネル表示を見て、メンバーの要望に応える。でもそれは滅多にナイことだった。個室の中の設備は充実していて足りないモノはなかった。

 配属されて最初の2週間は仕事を覚えるのに一生懸命だった私だ。3週間目に入った時だった思う。チュープレス・スポーツクラブ・リフレッシュルームのシフトは3人体制になっていた。その日のシフトは、1人はベテランの武田さん・もう1人は3年目の元山さんと私だった。武田さんがメンバーに呼ばれて個室に向かった。元山さんが内線電話を受けていた。 
「榎本さん‥ちょっとお留守番してくれる?私‥ビジターのお客様をお迎えに行ってきますね」
「はい!わかりました」私は返事をして、フロントのチェアーに座った。

 私は、元山さんが出て行ってからデスクの引き出しにある「マニュアル」を見ていた。時間がある内に仕事の「復習」をしたかったから。機械のマニュアルを見ながら、私は手を動かしていた。
「あぁ‥このレバーを引くのね」
架空のレバーを引いた時だった。私の肘がデスクのファイルに当たってしまった。ファイルは床に落ちてしまい、ファイルを拾い上げた時だった。今まで見たことのないファイルが目についた。何も書かれていない‥コレ何だろう?業務上のモノだったら、私も目を通しておかなければ。私は指でページをめくった。
作品名:ダブルな顔 作家名:楓 美風