ネットラブ…して変わった私
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買い物から帰って来た私は、食料品を冷蔵庫に入れてから、ダイニングテーブルに座った。私はバックからラッピングされた小さなビニール袋を取り出した。ラッピングをほどき、中に入っていたモノをテーブルの上に並べた。
「自分が使うのにラッピング頼んじゃった。でもこれもいいんだよね。ハヤトが自分にご褒美あげるのも良い事だって言ってたもん。頼む時は少し恥ずかしかったけど‥何だか嬉しい気分だね。1本500円もしないリップグロスなのに」
夫が帰って来て、いつもなら「ただいま」と言って私の前を素通りするのだが。今日はその足が止まった‥そして私に言った。
「み‥美菜子メイクしてんの?」驚いた顔をしていたな。それも相当驚いていた。
「メイクって程のものでもないよ。グロス入れただけよ‥そんな珍しい?」
「い‥イヤそんなことないけど。美菜子‥何かあったのか?最近変わったね」
キッチンのIHコンロの横に来て、夫はまた私の顔を覗きこんだ。
「かな‥ずっとパソコンばかりしてるのもね。体に悪いし‥老けるし」
「ふ‥老ける?あぁそうかも知れないね。俺の好きなもんだ。やったぁ」
鍋の中のミネストローネを見た夫は、何だか嬉しそうだった。
今日はハヤトと22時に「チャット」部屋で待ち合わせしていた。この頃ハヤトは仕事が納期前で忙しくて、毎日のように「チャット」をしなくなった。私もリーマンを夫に持つ身なので、リーマンが忙しいのは良くわかる。だからハヤトにはムリを言わなかった。たっく―の時は結構言ってたな。反省 (;一_一)
ハヤトは疲れてる時ほど話しをしたいみたいで、いつもよりテンションも高かった。ハヤトの仕事は黙々と作業をする仕事のようだ。何をしているのかハッキリは知らない。聞いたけどボケられたことがあって、これ以上聞いてはイケナイと思ったから聞かなかった。
「ハヤト‥仕事中にそんな事思っていたの?」
「うん。黙々と仕事してるとさ‥手は動いているんだけど。頭の中は別の事考えてる事多いぜ。あぁちゃんと仕事はしているよ」
「わかってる!ハヤトはそんな事しない人だってわかってるよ。私」
「ありがとう‥みなぴーさん。アンタは俺の癒しの女神だよ」
私はその言葉に顔が赤くなった‥そんな言葉を夫にだって言われたことがなかったから。また途中でキーボードを打つ手も止まってしまったようだ。
「アレ‥俺マズイ事言った?返事がないんですけど‥みなぴーさん」
「うん(^v^) そんな言葉は最近‥言われたことがなかったから」
正直に書いてしまった私だった。
チャットが終わってから私は放心状態だった。またハヤトの話術にハメられたようだ。あの人はどーしてあんなに聴き上手なのかしら?今度は‥
「ダイエットをしようよ。俺と一緒に!俺はデスクワークだからさ‥ここ数年体重増加しちゃってね。3年で7キロ増えたんだ!だから一緒にしようよ」
また‥私は「うん」と承諾してしまったのだ。どうして、ハヤトの言う事には、無条件でうなづいてしまうんだろう?嫌じゃないから「うん」て言うんだよね。
作品名:ネットラブ…して変わった私 作家名:楓 美風