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私だって…

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雅樹先生の絵画教室に入った私は少しずつ変わった。絵画教室は毎週水曜日の午前11時から13時までだ。前日の火曜日から心が弾んだものだ。明日の「お題」は何かな?とか先週描いた絵を今度はどんな色付けをしようかとか、考えるだけで心がワクワクした。

娘の萌と夫の健吾は相変わらずだけど、もうそれほど煩わしくなくなった。いや私が視界に入れてないのかもしれない。雅樹先生に言われた言葉が私の心を軽くさせたようだ。2回目のお教室の後で、雅樹先生は教室を「ティールーム」にして、ご自分でドリップしたコーヒーと焼き菓子を出してくれる。コーヒーと甘さを抑えた焼き菓子がまたよくマッチしてて美味しいのだ。その日は私と由美っぺと同じ年代の加藤さんと宮本さんが一緒にコーヒーを飲んでいた。雅樹先生と私達で世間話をするのだが。この雅樹先生は大阪人ならではの「突っ込みとボケ」をしてくれて。私達は大笑いするのだ。また笑った後は気分も良かった。そう言えば、ここ数年こんなに笑ったことがなかったな。絵画教室に通い出してから、私は変わった。雅樹先生にも言われたのだ。
「自分の時間も楽しんでもいいと思うよ。結婚してからずっと頑張ってきたんでしょう?加奈子さん。好きな事しなよ‥人間タマにはそんな時間も必要だよ」
それから、何だか肩の力が抜けたのだ。いつも1人で頑張ってる気がしていた。娘の萌と健吾の為に頑張ってきたけど、時々空回りして二人に怒られてヘコむこともあった。また、私は外見にも気を遣うようになった。前日には洋服選びから始まりソレに合わせたメイクもするようになった。いつもなら朝はすっぴんだが、買い物に出る前にはリキッドファンデーションと眉を少しだけ書き足して薄くルージュを引くだけだった。でも、絵画教室に通いだしてからは、結婚して初めてメイク用品を買い足した。結婚してすぐに萌が授かりそれから育児一色だった。健吾はあの通りだから育児は私の仕事だったから、オシャレをする時間もなく洋服を選ぶ時間もなかったから。手持ちのアイシャドー・チーク・ルージュを見てため息をついた。
「ダメね‥コレじゃ」とまた‥ため息をついた。
そして私は化粧品とメイク用品を買うのに、いつもの100円ショップではなくスーパーの地下にある販売員がいるコーナーに向かったのだった。
作品名:私だって… 作家名:楓 美風