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私だって…

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ミラーの中を覗きこんだ私は驚いた。正直な感想を言ってもいいだろうか?ビックリした‥顔が変わったのかと思った。それぐらい、変化した私だったのだ。美容部員もうんうん‥うなづきながら言った。
「加奈子さん!イケてますよ」
社交辞令かもしれないが誉めてくれた。美容部員の女性が誉めてくれて嬉しかったのか。私は基礎化粧品・メイク用品をセットで買った。お金は独身時代の貯金から出した。出しても全然惜しみなかった私だった。ま、遣うヒマもなかった私だったけど。

 翌日から私は、起きたらまず洗面所に向かって自分の時間を作った。丁寧に洗顔し、ローション・乳液・美容液・クリームを塗り眉をアイブロウで教えてもらった通り描いた。そして、リキッドタイプのベースカラーを顔につけて薄くファンデーションを肌につけた。終わりはカラ―グロスを塗って、髪をいつものひっつめから後ろでバレッタで留めた。洋服もいつもの薄手のトレーナーとジーンズスカートをやめて。昨日買った「大人可愛い」系のカットソーにツェードのブラウンのスカートを履いた。ちゃんとパンストも履いて。こんなカッコするの何年ぶり?ううん‥結婚して始めてかも。
「私って結構見れるじゃない。40歳のオバさんには見えないよね?」
1人で喜んでしまった。これ自画自賛って言うんだよね。

私は結構単純な性格をしていたのかもしれない。メイク・髪形・服でこんなに気持ちが変わるなんて、何で今までしなかったんだろう?ちょっと後悔してしまった。 いつも私に無関心な娘の萌・ソレ以上に無関心な健吾もビックリしていたようだ。イヤでも自分達の視界に私が入ったから。萌が何か言いたそうだったが。私はワザと目を合さなかった。そしていつも通り送り出してやったが、言ってやった。
「カフェテリアのランチの方が美味しいもんね。はい、500円あげるわ。これでお昼食べてね。ママもお弁当作りしなくていいから助かるわ。行ってらっしゃい」
手に500円玉1枚握らせてドアを閉めてやった。また健吾にもいつもの言葉言わずに。
「行ってらっしゃい。気を付けてね」と言って笑顔で送り出してやった。
健吾はさっきよりもビックリした顔をして、言葉が発せないようだった。

玄関を閉めて、私はそら太をダッコして抱きしめた。
「ッハッハ‥そら太君!面白いね‥見たぁ?パパと萌ちゃんの顔!初めて勝った気分がするわ。ママ!嬉しい」
そら太は私の気持ちを分かってくれたのか。またシッポを振って舌を出してくれた。
「ママ‥頑張るね。もっと自分磨いちゃう!これからはもっと自分の為に頑張るよ」
そら太の頭をなでた私だった。
作品名:私だって… 作家名:楓 美風