私だって…
雅樹先生から画用紙と色鉛筆を貸してもらって、私は17年振りに絵を描いた。23歳で結婚してから絵筆を握ることがなかったから、嬉しかった。
雅樹先生は一旦奥に入って。トレーにコーヒーカップを3個乗せて戻って来た。
「楽しそうですね。絵は好きですか?」
「はい‥好きです」
後から由美っぺに聞いたが、この時の私は笑顔だったと高校時代の「かなっぺ・スマイル」だったそうだ。1枚の絵に、ラフスケッチから入って水性絵具を借りて色付けした。出来上がるまでに1時間もかかった。でも、由美っぺと雅樹先生は絵が出来上がるまで温かく見守ってくれていた。雅樹先生にお礼を言ってビルを出た。描き上がった絵と手にはパンフレットを持っていた。いや、由美っぺに手渡されたのだ。
「あの先生ね!2ヶ月前に教室開講したの!私はタマタマ街頭でお手製のチラシをもらったのよ。またそれがね!かわいくて‥」楽しそうに話す由美っぺだった。
それから、由美っぺは絵を描きに行ったそうだ。楽しみながら絵を描く由美っぺに雅樹先生は「また遊びに来て下さい」と言ったそうだ。
私を誘った日が、由美っぺは3回目のお絵描きで帰りに私に言った。
「ね!かなっぺ‥一緒にお教室に行かない?私もまた絵を描きたいんだ」
「うん‥いいよね。私も描いてみたいけど」
由美っぺは私のオシリを軽く叩いた。
「いいじゃないの!行こう!お月謝だってカルチャースクールより安いよ。ね」
とまた、あの由美っぺスマイルをした。